クラウドファンディングサイトにしばしば登場するユニークな商品企画。しかし、資金調達に成功した後の様子を知る人は少ないのではないか。クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」を運営するサイバーエージェント・クラウドファンディングによる寄稿連載の1回目。(編集部)
青色LEDの発明・実用化に貢献した日本人研究者がノーベル物理学賞を受賞するなど、最近再び話題を集めている「LEDライト」。従来の電球に比べて大幅に電気代を減らせるなどのメリットが注目される一方、スペック面からは見落とされがちな難点を感じている人もいるのではないだろうか。――そう、それは“デザイン”だ。
半透明のプラスチックに大きな放熱部を備えるLEDライトに対しては「あまりおしゃれではない」という声もあり、昔ながらの白熱電球が持つガラスやフィラメントの美しさにこだわるファンは今でも多い。実際、おしゃれなカフェや雑貨屋などでは、その理由からいまだに切り替えを躊躇しているところも少なくないようだ。
もっとおしゃれなLED電球を作れないか――そこで名古屋市のカーアクセサリーメーカー・ビートソニックが思いついたのが、昔ながらの白熱電球が持つ美しさを生かしたLED電球「Siphon」の開発だ。同社は今年10月15日にクラウドファンディングサービス「Makuake」でSiphonの開発資金調達プロジェクトを立ち上げると、開始から6日で目標額の150万円を突破。それから約2週間で500万円を突破し、今も支援額は伸び続けている。
ビートソニックはなぜクラウドファンディングで資金調達を行うことを決めたのか。また、資金調達プロジェクトが成立した今、社会にどのような価値を提供しようとしているのか――その背景や狙いを聞いてみた。
Siphonは、昔ながらの電球でも使われるガラス球を用い、白熱電球の美しさのポイントとも言える「フィラメント」(細い糸状の発行部分)をLEDで再現したLED電球だ。
開発プロジェクトを立ち上げた戸谷大地さんは、20代前半にITベンチャーで新規事業立ち上げに携わった後、現在はビートソニックで照明事業の新規立ち上げに関わっている。戸谷さんはこれまでも同社でいくつかの商品化を実現してきたが、大きなヒットには至っていなかったという。そんな中で同社が注目したのが、LEDライト事業への新規参入だったというわけだ。
だが、そもそも車用品メーカーである同社がなぜLEDライト市場への新規参入を決めたのか。戸谷さんは、LEDライト市場にはすでに多くの大手メーカーが参入しているものの、LEDライトに“デザイン性”を求める消費者ニーズは表面化しておらず、大手が取りかかることはない市場だったと振り返る。
そこでSiphonは「“おしゃれなLED電球”を実現するために細部までとことんこだわった」(戸谷さん)。昔ながらの電球の美しさを表現するために、透明なガラスの質にこだわり、LEDに工夫をこらしてフィラメントの形状を再現し、さらにはLEDライト特有の放熱部をなくしている。試作品では3種類の電球を用意しており、写真の左から「ボール」、中央が「エジソン」、右が「シャンデリア」となっている。
3つのデザインはいずれも魅力的だが、中でも「エジソン」は発明家のエジソンが生み出した白熱電球のデザインをイメージして開発したという。そのガラス部分は「エジソンが発明した当時のものにできるだけ近づけたい」という思いから、内側に“フィラメントの焼きつき”のようなゴールドの装飾を施している。
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