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腕時計から「リストファッション」へ 1万円台の国産カスタム腕時計「Knot」の狙い連載・クラウドファンディング「成立」のその後(2/3 ページ)

» 2015年01月20日 09時00分 公開
[坊垣佳奈(Makuake),ITmedia]

クラウドファンディング実施の狙いは「若い世代へのアプローチ」

 こうして生み出した商品をすぐに発売することもできたはずだが、遠藤さんはあえてそうせず、正規販売スタートに先駆けてクラウドファンディングを実施した。その最大の理由は、Knotのターゲット層である「腕時計を普段使わない若い世代」にアプローチするためだ。

 ネットに親しんでいる若者たちにアプローチするには、店舗よりもWebサービスを活用したほうが効率がいいはず――こうした仮説のもとでクラウドファンディングを実施したところ、その狙いは的中。プロジェクト終了後、支援者向けにアンケートを実施したところ「今回初めて腕時計を購入した人」が14%に上ったという。

photo Knotのプロジェクトページでは「着用後のイメージ」を膨らませるようなコーディネート例を多く掲載。それまで腕時計を使っていなかった層からも注目を集めた

 また、クラウドファンディングによって商品販売前にテストマーケティングを行う狙いもあった。ネット販売中心とはいえ、市場ニーズの低い商品を世に出してしまうリスクはゼロではない。実際のターゲットユーザーに商品が求められているかを事前に確認するため、クラウドファンディングは効果的だと考えたという。

 そして3つ目の理由は「プロモーション効果」が見込めることだ。資金を調達しながら話題になれば、マーケティングの観点でも効率的であると見込んでいたという。

 プロジェクトを開始すると、まずは知り合いを中心に支援が集まり、その後も支援者層が拡大。スタート6日で目標金額の100万円を達成し、最終的には目標金額の5倍となる502万円を調達することができた。こうして集まった資金は支援者向けの特典準備に使ったほか、Webサイトや新商品の開発費用にもあてたという。

ネットだけで“即完売” 流通の決定権はショップから「消費者」に

 Knotはクラウドファンディングプロジェクトの終了後も、その実績と商品自体の魅力が話題となり、多くのメディア露出を通じて注文が殺到。2014年の生産分は発売後すぐに完売したという。「メーカーの経営はネット販売だけでも十分成り立つと感じた」と遠藤さんは振り返る。

 また、メディア露出などをきっかけに、多くの販売店やセレクトショップから「うちの店頭でKnotを扱いたい」という声も上がったという。

 「これまでは、メーカーから流通側に対して『商品を扱ってください』とお願いし、バイヤーの目にかなえば販売が決まるというのが主流だった。しかし、クラウドファンディングを通じ、消費者からの支持を受けて“実際に売れた”という実績が証明できるようになった。いまや商品を扱うかの最終決定者は“消費者”に変わりつつある」

 大手販売店からの声を受け、昨年10月からは「実際に手にとって商品を購入したい」と考えている人のために店頭販売も行っている。ただ、「購入者自身が自由にデザインをカスタマイズできる」というKnotのコンセプトを店頭でどう実現するかは今後の課題という。

photophoto Web上で注文できるカスタマイズ例

 クラウドファンディングでの実績がきっかけとなり、金融機関から多額の融資も決まったという。遠藤さんによれば、「初めて取り引きする企業に対してこれほど多額の融資をするのは初めて」と金融機関の担当者は語っているそうだ。

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