デジタルスカルプティングツール「ZBrush」の最新版が「ワンダーフェスティバル 2015 winter」(2月8日、千葉・幕張メッセ)の3D-GAN(3Dデータを活用する会)とワコムの共同ブースで出展された。デジタル造形への注目の高さを示すように、体験会は開場からすぐに満席になり、実際に利用しているプロの声を聞くセッションも盛況だった。
「ZBrush」は米Pixologicが開発する3D造形ソフト。64ビットOSに対応した最新版「ZBrush 4R7」が1月にリリースされたばかりで、粘土の造形感覚を生かしながら、ペイントソフトのように3Dモデルを制作できるのが特徴だ。
ブースでは、実演「初音ミクのデジタル原型を作る」や最新ZBrushのデモンストレーションのほか、「ZBrush 4R7」と最新液晶ペンタブレット「Cintiq 27 QHD」を体験できるコーナーなどが設けられた。
パネルディスカッション「原型制作の今とこれから」では、「figma」シリーズの原形や構造設計を行っている原型師・浅井真紀さん、グッドスマイルカンパニーの中村文年さん、3D-GANの相馬達也さん、Pixologicのトマ・ルッセルさん、ハイミ・ラベルさんが登場した。
元々手作業で原型を作成していた浅井さんは、足を骨折したときに机の上だけで造形が可能なデジタル造形を試したところ、今後はこれで行けるのではないかと感じ、本格的にデジタル造形を始めたとのこと。figmaにはオプションパーツが多いが、複数の手の形などをアーカイブとしてストックできるのが利点だという。
粘土と異なり自由に拡大できるのもデジタルならでは。浅井さんは「年齢的に視力の衰えを感じているので助かる」としつつ、拡大することでスケール感の違いやイメージとのずれが生じるため、実際に3Dプリンタで出力し、原寸の物を手にとって補正を重ねる作業が必要と実感を話す。
人気フィギュアシリーズ「ねんどろいど」は「現在3割がデジタル造形」(中村さん)というように、デジタルツールの進化と普及はプロ・アマ問わず進みつつある途上。注目の高さを示すように、ZBrushの一般向け体験会は開場から40分で1日の定員が満席となった。参加者の多くはデジタル造形は初めてだったようだ。
来日したPixologicの両氏は「これだけ多くの造形を行う人がいるのは素晴らしい」「(ほめ言葉として)クレイジー! ATMからおろしたお金を妻に渡して、いろいろ買ってくるように頼んだ」と笑顔を見せ、日本で大規模な造形のためのフェスティバルが行われていることに感激した様子だった。
「デジタル造形はまだ新しい技術であり、自分も何度も3Dプリンタで出力して上達してきた。上達の速度は従来の粘土での造形よりもはるかに速い。現在粘土で作業している人も、ゼロから始めようという人も、ぜひこの世界に飛び込んでほしい」(ルッセルさん)
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