新「VAIO Z」は、コンパクトさは意識しつつも、薄さや軽さではなくスペックにこだわった。その背景には、タブレットやスマートフォン市場との差別化がある。
「コンテンツを楽しむだけならスマホタブレットで十分、PCはいらないという人もいるだろう。マーケットの規模と取るために薄さ軽さに向かえば、用途がタブレットと重なる。VAIOは小さな会社。規模で勝つことはできない。スマホやタブレットとは違う、PCならではの用途でより気持ち良く使えることを目指した」(伊藤プロデューサー)
前モデルの「VAIO Z」は薄型軽量で、パナソニックの「Let'snote」などが競合製品と目されていたが、新モデルは「他社とは同じ方向は向いていない」(伊藤プロデューサー)という。「今までは、低消費電力のCPUを使ってさらに薄く、何ミリに……と訴求していたが、新『VAIO Z』はユーザーの生産性・創造性を高めるもの。次のPCはどうあるべきという提案で、向いている方向が違う」
高速レスポンスや長時間のバッテリー駆動、色再現性の高いディスプレイ、高性能なタッチペンやスピーカー――スマートフォンやタブレットでは太刀打ちできない機能をそろえ、高性能な「道具」を求めるビジネスパーソンという新たな市場を開拓する構えだ。「VAIOは小さい会社。マーケットサイズは(ソニー時代より)小さくなるかもしれないが、ターゲットに向けて深く刺さる商品を開発できるのでは」(伊藤プロデューサー)
ただ現状、ハイスペックノートの市場は小さく、「市場を開発することも使命」と同社の関取高行社長は気を引き締める。「店頭でこのゾーンは小さいが、ダイレクト(Web直販)の市場ではボリュームが大きい。市場に存在しないものを問うて大きくしたい」と花里隆志マーケティング・セールス/商品企画担当執行役員は意気込む。
クリエイター向けタブレット「VAIO Z Canvas」も5月発売を目指して開発中。「VAIO Prototype Tablet PC」として試作機を公開していたモデルで、スタンド機構やワイヤレスキーボード、滑らかなペン入力、Adobe RGBを95%カバーする独自開発の液晶ディスプレイなどを備える。
試作機「VAIO Prototype Tablet PC」から製品版「VAIO Z Canvas」への変更点は、製品名と外観だ。外観は試作機ではブラックだったが、製品版は指紋が目立ちにくいシルバーに変更した。実売予想価格は20万円台。
「一方的に作るのではなく、ユーザーと一緒に作る」(関取社長)ことを掲げ、写真家や漫画家、アニメ監督などに試用してもらいながらブラッシュアップしてきた。漫画家の中村光さんが同機を使って描いたイラストが2月21日発売の「モーニング・ツー」表紙に掲載されるなど、クリエイターとのコラボレーションも進めている。同社は今後、クリエイターのサポートプログラムも展開するという。
ファッションブランドのBEAMSとコラボレーションした「VAIO Z|BEAMS特別仕様」も発売する。ヒンジ部分にBEAMSのロゴを、タッチパッドをBEAMSカラー(オレンジ色)にするなど「気持ちを明るくする」デザインを施したという。
VAIO事業がソニーから独立して初のオリジナル製品。「VAIO Zの『Z』には、ZEROの意味合い。わたしたちにとっての始まりという意思表明だ」と伊藤プロデューサーは意気込む。
新製品は「社員240人みんなで作った」(関取社長)という。スタッフはソニーから引き継いでおり、開発プロセスなどに大きな違いはないが、関取社長は「分業ではなく、全社員で作った」ことや「他社からの接触が驚くほど多かった」ことを、ソニー時代との違いに挙げる。
VAIOブランドのスマートフォン投入も予告しており、協業先の日本通信から後日、詳細が発表される予定だ。「今年SIMロック解除の義務化が始まるが、この市場に一石を投じられる新しいスマホビジネスと通信のありかたに挑戦する。スマホのハードウェア市場が厳しいことは承知しているが、格安スマホ市場はハード勝負ではく、通信などを含めたを含めた全体のパッケージだ。ハードや通信サービス事業者、お店を含めてどう組んでいくかがポイントだ」と関取社長は話している。
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