ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

本社ビルも売却 「聖域なし」「不退転」シャープの再建策、成否は

» 2015年05月14日 19時56分 公開
[ITmedia]

 「不退転の覚悟で先頭に立ち、社員一丸となって達成を目指す」──5億円への減資や社内カンパニー制導入などを柱とした中期計画を発表したシャープ。都内で会見した高橋興三社長は、「不退転」を繰り返し、決意を強調した。「聖域はない」として本社売却も決める一方、液晶事業の分社化などには踏み込んでおらず、投資家は不十分とみる可能性もある。

photo 再建策を説明する高橋社長=14日・都内

 再建策では、(1)資本金を5億円に減資し、(2)みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行が各1000億円ずつ、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズが250億円をそれぞれ優先株として引き受ける形で出資する資本増強に加え、(3)国内の希望退職3500人程度を含むグローバル10%の人員削減などを断行、2015年度で固定費285億円を削減。15年度に営業利益800億円を達成し、16年度に最終黒字転換を果たすという道筋を描く。

 目玉の1つは社内カンパニー制の導入だ。現在の2ビジネスグループ・8事業本部を、10月1日付けで「コンシューマーエレクトロニクス」「エネルギーソリューション」「ビジネスソリューション」「電子デバイス」「ディスプレイデバイス」の5カンパニーに再編する。

 「社長が財務3表に基づき、自らの責任で自立した経営を行い、コーポレートは統制をきかせ、全社として規律あるスピード経営を目指す」──高橋社長はカンパニー制の導入をこう説明する。

 「感度が鈍いと言われればそれまでだが、10月時点ではそこまで落ち込むとは想定していなかった」──主力の液晶事業に異変が起きたのは昨年10月以降のこと。シャープが押さえてきた中国スマートフォンメーカー向け中小型パネルでジャパンディスプレイ(JDI)などとの競争が激化。同事業で当初は550億円の営業利益を見込んでいたが、最終的に約300億円にまで落ち込み、見通しが狂った。

 2014年度の連結決算は、最終損益が従来予想の300億円から2223億円にまで悪化した。中小型液晶の価格下落などから営業損益が480億円の赤字に転落。減損や構造改革費用の計上もあり、巨額の最終赤字に転落した。

 「13年度と14年度上期は黒字を出せていたが、この下期のような状況では全く耐えられない。それが発覚してしまった」「大きな市場の変化は起こりうるものだ。現在のガバナンス、管理体制では対応しきれなかったのが反省点だ」(高橋社長)。機動性を高めたカンパニー制のもと、液晶事業は今後、産業向け比率を高めて安定性を高める算段だ。

 液晶事業を分社化し、外部の資本を呼び込む案も浮上したが、「(液晶事業を)現時点では外部の企業体にするというロードマップは描いていない」と否定した。一方、「もはや聖域はない。本社を売ることでキャッシュが入ってくるし、経営に貢献できる」と、大阪市の本社ビルを売却する方針を明らかにした。現時点では具体的なめどは立っていないが、「本社を売却してでも構造改革を遂行したいという強い意志だ」という。

 国内では3500人の希望退職を募る予定。約3000人が応募した2012年に続き、また多くの社員が同社を去ることになる。高橋社長は「途中で投げだすわけにはいかない」と中期計画の達成が経営責任だと述べた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.