ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >

ロケット開発もマーケティング重視で JAXAの新型基幹機「H3」は「顧客の声が第一」(2/3 ページ)

» 2015年07月08日 20時04分 公開
[岡田有花ITmedia]
画像

 JAXAが行ったマーケティング調査によると、顧客がロケットを選ぶ最も重要な指標は打ち上げ価格と信頼性。次に重視するのはスケジュールの柔軟性や確実性だ。現行のH-IIAに対しては、「信頼性は高いが値段が高い」「強みが分かりにくい」「顧客のほとんどが国だという印象がある」といった意見が挙がった。

 H3は、H-IIAまでで培ったロケット技術を集大成し、日本が得意とする技術を融合することで、低コストながら高い信頼性と柔軟性のあるロケットを実現し、「世界中の人たちが使いたくなるロケットを目指す」という。

 コストを低減するため、システムをモジュール化し、ライン生産に近づける。部品もなるべく共通化し、可能な限り民生品を採用。日本の得意な技術を生かした部品を積極的に活用し、高精度と低コストを両立させるという。

画像

 エンジンは第1段に新型エンジン(推力150トン)を2基か3基、第2段に従来のエンジンの改良型(推力14トン)を1基搭載。それぞれ、安全性と低コストを両立できるという独自の「エクスパンダブリードサイクルエンジン」を採用する。新型エンジンの設計時には最先端の数値シミュレーションを活用し、実際のエンジン稼働試験を行う前に問題をつぶしておけるようにする。新型エンジンの設計のめどは付きつつあるという。

 種子島宇宙センターの射場設備はH-IIBと同じものを流用できるようにした。これまで、受注から打ち上げまで2年、打ち上げ間隔は2カ月、組み立て作業に1カ月かかっていたが、それぞれ半減を目指し、年間6回打ち上げられるようにし、柔軟な打ち上げスケジュールが組めるようにする。


画像
画像

 射場での整備作業期間も短縮。機体組み立てから打ち上げ後の補修・点検まで、H-IIAでは最短で53日かかっていたが、この半分程度への短縮化する計画だ。点検を自動化することで打ち上げ当日の運用人員も大幅に削減。H-IIAは100〜150人必要だったが、3分の1から4分の1以下に削減する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.