星新一ワールドが現実間近 「人造小説家」の次は?
AIの書いた小説でコンテストに応募
日本SFの先駆者にして「ショートショートの神様」と謳われた小説家の星新一(1926-1997)。4000字以内で、ロボットや人工知能(AI)、未来社会を描いたショートショート作品には、いま読んでも驚かされるものが多い。
その星新一をリスペクトするあまり、AIに星作品なみのショートショートを書かせようとする「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」を始めてしまったのが、公立はこだて未来大学の松原仁教授だ。星新一の全作品を入力したAIに、表現や形容などの文体を再現させる。また、星がエッセイに書き残した発想の秘訣をアルゴリズム化する試みも行っている。
星新一を記念して創設された日経「星新一賞」は、理系の発想力を求めるショートショート中心の文学賞だ。一般部門は応募資格に制限がなく、「人間以外の応募も可能」と初期には明記されていた。第3回の今年、「作家ですのよ」プロジェクトは4本のショートショートを応募し、うち2本が一次予選を通過した(「コンピュータが小説を書く日」「私の仕事は」)。本選考の結果は落選だったが、その意義は大きい。
同プロジェクトのAIはいまのところ、破綻のない文章を書くことはできるが、プロットを作ることができず、松原教授らが設定したプロットに基づいて文章を書くだけだ。発想力が評価される星新一賞では、AIの特性を活かせないかもしれない。しかしショートショートにこだわらず、昔から「機械にプロットを書かせている」とうわさされているロマンス小説など、決まり切ったプロットが通用する一部のエンターテインメント小説なら、一定レベルの「作品」を生み出す可能性がある。
過去の小説家が自作朗読?
星新一といえば、別の話題もある。新潮社は約40年前から、星や藤沢周平といった当時の人気小説家約1000人が肉声で自作を解説する、テレフォンサービスを行っていた。そのテープを整理し、この4月からウェブで次々に公開していくというニュースだ。物故した小説家の貴重な音声データも多い。
十分な量の音声データが遺されているのなら、オープンソースの音声合成ソフトOpen JTalkやhideさんの合成音声を実現したAITalkなどを使って、小説家の肉声そのままの音声合成が可能になる。名作や新作?の朗読を、作者自身の声で聞くことができるようになるわけだ。もはやかなわぬ作家自身のオーディオブックが入手できるかもしれない。
星新一の処女単行本『人造美人』のヒロインであるボッコちゃんは、理想的な美人だが絶対に手を出せない存在だった。しかし「人造小説家」は、我々の手の届くところへ来ているかもしれない。
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