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“自分にしか作れない”を武器に――シングルマザーのNo-ticcaさんが人気ハンドメイド作家になるまで「好きなことで、生きていく」の現在(2/3 ページ)

» 2016年04月25日 12時30分 公開
[山崎春奈ITmedia]

 ハンドメイド作家として自立しようと決めたきっかけは、子どもを産んだこと。アパレル関係の店舗に勤務している身では、土日も出勤しなくてはいけない。これから年齢を重ねていくと、体力的にも金銭的にも厳しくなる――と、シングルマザーとして長期的に家計を支えるのは難しいと感じた。

 収入源をアルバイトから作品販売に少しずつ移していく選択肢もあったが、同居する母や姉をはじめとする家族の後押し・サポートもあり、迷った末、“3年”と期間を決めてハンドメイド作家に専業で打ち込むと決めた。「とにかく3年、覚悟を決めて手を尽くそう、どうにもならなかったらすっぱり諦めて、コンビニやスーパーでアルバイトでもしよう」。

 「とりあえず仕事を辞めてからどうにかするって、さすがに人に勧められることではないですが(笑)。自分はそこまで追い込まないとダメだなと。……今だから言えるけれど『多分いける気がする!』という根拠のない自信があった」(No-ticcaさん)

 “根拠のない自信”を支えたのが、この財布に注いできたこだわりと、周囲からの好評の声だった。鞄や小物などさまざまなものを作ってきたが、特に布財布は、老若男女問わず「これ、ほしい!」「どこで買えるの?」と声を掛けてもらえることが多かったという。

photo 布はECサイトで探し、ロール単位でスマホから買い付け。財布のサイズにした時に映える大きさの柄であることが選ぶポイントという。「部屋の中は大きな布ロールだらけです」(No-ticcaさん)

 「ハンドメイド」という言葉が持つ女性的なイメージにとらわれず、ポップでスタイリッシュなデザインを押し出し、性別を問わず使えるアイテムであることをアピールすれば、広く興味を持ってもらえるはず。そう考え、制作アイテムは財布1本に絞り、当時オープンしたばかりのハンドメイドECサイト「minne」で本格販売をスタートした。

作り手はもっと戦略的になっていい

 手応えを感じたのは2012年、販売スタートから3カ月ほど経ったころ。minneトップページの「ピックアップ」におすすめ作品として取り上げられたタイミングでお気に入り登録が2000近くに跳ね上がり、当初の狙い通り「まずは目を留めてもらえた」感触があったという。少しずつ注文が増え、購入者から口コミが広がり、徐々に人気を獲得していった。

 拡大するハンドメイド市場で人気作家になる秘けつは――No-ticcaさんは自身のこれまでを振り返り、「自信を持って『いいもの』と言える作品を作ること」「気付いてもらう努力をすること」と話す。見せ方のコツを自分なりに確立した時期と、販売数が増えた時期は実感としてかぶっているという。

 例えば「写真」。ECサイトでは、写真の良し悪しがページビュー数、購入数に直結する。No-ticcaさんは、布財布をかばん風に肩に掛けた際の全身バランスが分かる写真を用意したり、小銭やクレジットカードを入れた使用イメージを撮るなど、商品自体だけでなく、生活の中での使用シーンも想像してもらえるようこだわっている。

photo 別売りの革紐を使うとミニバッグに
photo 作品ページの写真の一部

 いい写真を撮るために必要なのは、高い機材や設備ではなく、商品の良さをシンプルに最大限伝えようとすることだという。とにかく明るいところで撮り、加工は一切しない。使っているカメラは全てiPhoneだ。

 「手に取ってもらえれば良さが伝わる自信はあったので、知ってもらうため、目に留めてもらうためにどうしたらいいか考えて試し続けた。作品数が多く、商品カテゴリー内に埋もれやすいアクセサリーなどでも、写真の撮り方、価格、見せ方など、工夫できる部分はたくさんあると思う。“いいもの”がたくさんある中でどれだけ差別化できるか、作り手はもっと戦略的になっていい」(No-ticcaさん)

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