今年に入り、工場と交渉して専用金具の開発・生産を始めた。「既成品ではどうしても100%満足できなかった」からだ。作家にとって作品制作は、生計を立てるだけでなく、より理想に近いものを生み出していく作業でもある。いつかは生地もオリジナルで作ってみたい――個人のこだわりを込められるからこそ、常にいいものを目指し続けたいという。
「とにかく3年」を終えた今、すでに前職での収入を超え、作品制作のペースやスタイルも安定してきたという。「がむしゃらにやってきて、なんとかなった。もうしばらくは続けていけそう」とNo-ticcaさんは笑顔を見せる。
今の課題は、増産が難しいことだ。1人で手作りしているため、最大でも週60個程度が限界。アシスタントを雇うことも考えたが、「最初から最後まで品質に責任を持てることもハンドメイドの魅力なので、ジレンマがある」という。
もう1つ、自宅で仕事をするようになって生まれた悩みは、仕事とプライベートをどう分けるか。1度集中すると自分の時間をどんどん削って打ち込んでしまうので、うまく息抜きするよう意識しているという。「学校から帰ってくる子どもに『お帰り』と言えるようになったのはうれしい。3年前の自分には考えられなかった働き方」。
メーカーに商品化を持ち掛けられたこともあるが、当面は今のように自分の目が届く範囲で制作していきたいという。ネットで作品を発表している以上、個人や法人から“パクられる”リスクも避けられないが、「真似されても、自分よりいいものはできないだろうという自信があるので。この形や仕組みにたどり着くまでの迷いや理由を知っているのは自分だけ」(No-ticcaさん)。
趣味を仕事に変え、ハンドメイド作家として独立し、好きなことを仕事にする道を選んだNo-ticcaさん。3年前の自分の選択について、今はどう思うのか。
「これだけSNSやスマートフォンを使える今、やってみる価値のある、挑む価値がある生き方だと思う。もちろん大変なことはあるが、私のように危ない橋(笑)を渡らなくても、もう少しスタートしやすいやり方もある。何より、自分が自信を持って作っているものをたくさんの人に知ってもらえるのは本当にうれしくて幸せなこと」(No-ticcaさん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR