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「撮りたい」の一瞬を逃さない ウインクで世界を切り取るウェアラブルカメラ「Blincam」(2/3 ページ)

» 2016年06月30日 11時00分 公開
[山崎春奈ITmedia]
photo 開発中のアプリ画面。スマホへのダウンロード、クラウドへのアップロード、破棄をフリックでめくるように選択する

 撮影した写真は本体内部のストレージ(16/32GBを予定)に保存し、専用アプリから確認・整理できるようになっている。同様の機能を持つデジタルカメラは、Wi-Fi経由で通信するタイプがほとんどで、その都度カメラと端末を接続する必要がある。

 Blincamでは、その一瞬の手間を省くべく、Bluetoothを用いて通信する仕様を採用した。スマホ側がBluetooth通信をオンにしている限り、特別な操作なくアプリを起動するだけで画像一覧を表示する。Bluetooth規格は本来は画像のような大きなデータをやりとりするものではないため、軽量化の工夫を施したという。

 プロトタイプを作る上で最も苦労したというセンサーも、使い心地を再優先に試行錯誤した。「ウインクで撮影」を実現するため、こめかみの筋肉の動きを検知する電波系の独自センサーを開発し、特許も取得。非接触センサーなので肌に触れる必要もなく、いつもの眼鏡のかけ心地を損なわない。

 「とにかく自分が1ユーザーとして感じる面倒くささや、いつもと違うアクションが必要になる手間をなくしたかった。眼鏡型の端末は数年前にいくつか出たが、あくまでギークな道具にどまってしまった理由の1つがここにあると思っている。眼鏡自体もファッションの一部であって、それごとメカニックにすることに抵抗がある人も多いはず。使いたい時にすぐに使えて、ユーザーの日常やこだわりを壊さないことを1番に考えた」(高瀬さん)

photo ボディはアルミ素材も検討したが(「やっぱりAppleが好きなので」と高瀬CEO)重さや強度を考えプラスチックに

子どもの自然な表情、その一瞬を収めたい

 Blincamのアイデアが生まれたのは2015年春のこと。外資系企業のシステムエンジニアとして働いていた高瀬さんは、起業に興味は持っていたが、具体的なアイデアはなく、起業家が集まるイベントの運営に携わりながら知見を広げていた。

 具体的に一歩を踏み出したきっかけは、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)をテーマにした「スタートアップウィークエンド」(週末で集中的に行うビジネスプラン立案ワークショップ)に参加したことだった。

photo Blincam 高瀬昇太CEO

 「子どものかわいいしぐさや表情、その一瞬を逃さず残したい」――着想の発端は、自身が子どもと遊んだり接したりする中で感じた「もっとこうなれば」というもどかしさと願望だった。スマートフォンや一眼レフカメラを使って撮ると、どうしても両手がふさがってしまう。レンズを意識していない自然な表情やしぐさを撮りたい。まばたきするだけでこの光景が焼き付けばいいのに……。そんな日々の感覚から生まれた。

 イベントにあたってチームでプロトタイプ作りに励んだが、決められた時間内にはアイデアをきちんと形にはできず、次につながるような賞や評価も得られなかった。しかし、周囲にヒアリングする中で「スポーツ中にプレイヤーの目線で撮影したら面白そう」「料理しながら撮ってみたい」など、自分の生活や趣味に引きつけた好意的な感触や提案が多く、手応えを感じたのも事実だった。悔しさの中で「絶対可能性はある、これはいける気がする」という思いが強まっていったという。

 7月には単身会社を設立し、ハードウェアエンジニアをはじめ、少しずつ協力メンバーを募っていった。夜や週末など空いた時間に手伝ってもらう仲間を集め、抱いた熱を形にすべく小さなチームでスタートした。

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