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中国版ストリートビューは改竄されている?

» 2016年07月15日 18時31分 公開
[大村奈都ITmedia]

 Googleが撤退した中国で、Googleストリートビューに相当するウェブブラウザ上で各地の風景を見られるサービスは、検索大手の百度が提供するBaidu Total Viewだ。このBaidu Total ViewについてウェブメディアWIREDの英国版が伝えるところによると、そこで表示される写真は政府に都合の悪いものが大幅に編集され、建物の存在がまるごと消されている場合もあるという。

photo 英国版WIREDの記事

 Baidu Total Viewは2013年に始まり、現在では中国の372都市をカバーしている。2015年12月の月間アクティブユーザー数は3億200万人で、前年比で43パーセント増になっている。

photo 天安門もパノラマビューで見える

 しかし2014年9月、上海在住のフリーカメラマンであるジョナサン・ブラウニング氏は、その事実に気がついた。上海を流れる黄浦川沿いにある工業地帯を見ていて、おかしなことに気がついた。実際にそこにある煙突の1本が、写真では消されていたのだ。

 ブラウニング氏がさらに調査すると、さまざまなものがBaidu Total Viewから消されていることがわかった。政府機関の建物、刑務所、消防署などがそうだ。おそらく治安上の理由からだろうが、消され方にいささかランダムだ、とも氏は指摘している。同じ建物が、至近距離では消されているのに、500メートルから1キロメートル離れるとそのままになっている例があるという。

 Baidu Total ViewはGoogleストリートビューと同じく、カメラを搭載した自動車が周辺の景色を撮影して(自動車が入れない場所ではバックパックを背負った人間によって)作成されている。Googleと同じように百度も、景色といっしょに写り込んだ個人の顔や自動車のナンバープレートなどは編集し、削除している。しかしGoogleと違うのは、中国当局が治安上の問題があると考える画像も編集されることだ。「我々はプライバシーと治安を侵害する情報を公開しない」と、百度の国際通信担当者はWIRED英国版に語っているが、消えた建物についての具体的な質問にはコメントしなかった。

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