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「セカイの終わり」とPokemon GO コノ、オオゾラニ、エアタグヲ立ちどまるよふりむくよ(3/5 ページ)

» 2016年07月28日 10時09分 公開
[松尾公也ITmedia]

セカイが終わった理由

 セカイカメラを終了させた谷口CEOは、「ARを見るために手をかざすのは恥ずかしい」「情報が整理されず混沌としてた」「毎日使う必然性」という3つの「失敗」を挙げている

 セカイカメラはもともと自由にテキストでも写真でも投稿できる、別の新たなレイヤーを創りだそうぜ、という「Tagging The World」がテーマで、だからこそ「姉ヶ崎寧々」タグが大量発生したりしていたのだが、「手をかざすのが恥ずかしい」も「混沌」も、セカイカメラがやってきたことの全否定である。

 実空間の位置にひもづけた情報をマッピングすることで起きる問題は、2009年7月に発足したAR Commonsという団体が、慶応大学の岩渕潤子教授(当時)を代表にディスカッションしていた。当時はGoogleストリートビューのプライバシー問題が取り沙汰されており、同様の問題がARで起きるのではということで議論されていたのだが、Pokemon GOで現在顕在化している問題の多くはここで予想されていのではないだろうか。その成果はどこかで反映されているのだろうか。AR Commons自体は活動を終えているようだが、いつの日か復活するというのはありうるのか。

 ちなみに、長崎の平和公園にポケモンジムやポケスポットが設置されて長崎市が困惑しているという話(結果的に原爆資料館のみ除外申請を出した)だが、いい機会なので、平和公園にかぎらず、長崎の被爆証言や被害の状況をARで表示するプロジェクト、Nagasaki Archiveについても言及しておこう。普段は目にしない情報を現実空間にマッピングしてレイヤー化するメリットは当然ながら、あるのだ。

photo 平和祈念像の周囲にAR表示された長崎被爆者の証言

 ちなみに長崎はネコが多い。平和公園にも人懐っこいネコがいて、訪問客をなごませてくれるので、リアルニャースと戯れるのもいいのではないだろうか。いつか実家に帰ったら、そのすぐそばにあるこの公園でPokemon GOをかざしてみようと思う。

photo 2012年夏、平和公園を訪れたときのネコと妻

 谷口CEOが指摘したセカイカメラ失敗の要因その3である、「毎日使う必然性がない」こと。

 それが利用者に知られてしまったのは、確かに痛いことだ。だから、徐々に使われなくなっていったのだと自分は考える。いまならばiOSにもAndroidにも備わっている通知機能で、どこでおもしろいエアタグに出会えるのか、アプリを起動していなくても知らせてくれるのだろうが、当時はアプリ自体をバックグラウンドで常に動かしておく必要があったのだ。

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