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どれも同じ? とんでもない! 「ACアダプター」に込めた開発者のこだわり新連載・“中の人”が明かすパソコン裏話(2/3 ページ)

» 2016年09月27日 09時00分 公開

 日本で展開することだけを考えた場合は、100ボルトのコンセントに差し込めればいいので、ハードルがぐっと下がります。ところが、海外でも使う場合、さまざまな形状のコンセントが存在し、電圧も100ボルトだけではなく200ボルトの地域もあります。日本市場向けのACアダプターを開発する上では、海外での利用にも対応しつつ、日本での使いやすさを同時に実現していく必要があるのです。

photophoto 「IEC-C7」(通称:メガネ)と「IEC-C5」(通称:ミッキー)。端子形状が違うとケーブルの太さもここまで変わる

 上の写真はいずれも日本向けのACアダプターです。使いやすさを考えると左側のIEC-C7(通称「メガネ」)のプラグを採用したACアダプターのほうが、アース線がないためケーブルを細くでき、持ち運びなどにも快適です。ところが、海外ではアース付きの端子が求められるケースも多く、実はこのIEC-C7のほうが汎用性が低くなります。

 ここがメーカーにとっては悩みどころでした。日本で利用する上では、ケーブルが細く、かばんへの収まりのよいACアダプターが喜ばれます。結論から言うと、私もそのようなACアダプターがほしいこともあり、いろいろと数値的な説得材料を用意し、会社に無理を言って採用しました。

 結果的にお客様に喜ばれ、売り上げも伸びているので、間違った判断ではなかったと思います。冒頭の写真は、当社のノートPCに初採用された“日本専用”のACアダプターです。

 このACアダプターは、L字型のDCプラグも同時に採用しました。L字型DCプラグは側面のスペースを節約したいという思いから生まれたデザインですが、ストレート型プラグがまだまだ一般的な中、この形状を標準採用するためには、メーカーの中でもロジカルな説明が必要になります。

 例えば、側面のスペースを○%節約できる、ユーザーアンケートで○%の人々に求められている――といったデータとともに「採用しましょう」とプッシュするわけです。こんな工程を経て、ようやく製品化された際の喜びはひとしおです。

photophoto ストレート型コネクターとL字コネクターの例

日本ならではの感性に注目 それは……

 ここまで「利便性」に注目したローカライズ模様を紹介してきましたが、メーカーの中にいると、日本人独自の感性に気づくこともあります。

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