日本で展開することだけを考えた場合は、100ボルトのコンセントに差し込めればいいので、ハードルがぐっと下がります。ところが、海外でも使う場合、さまざまな形状のコンセントが存在し、電圧も100ボルトだけではなく200ボルトの地域もあります。日本市場向けのACアダプターを開発する上では、海外での利用にも対応しつつ、日本での使いやすさを同時に実現していく必要があるのです。
上の写真はいずれも日本向けのACアダプターです。使いやすさを考えると左側のIEC-C7(通称「メガネ」)のプラグを採用したACアダプターのほうが、アース線がないためケーブルを細くでき、持ち運びなどにも快適です。ところが、海外ではアース付きの端子が求められるケースも多く、実はこのIEC-C7のほうが汎用性が低くなります。
ここがメーカーにとっては悩みどころでした。日本で利用する上では、ケーブルが細く、かばんへの収まりのよいACアダプターが喜ばれます。結論から言うと、私もそのようなACアダプターがほしいこともあり、いろいろと数値的な説得材料を用意し、会社に無理を言って採用しました。
結果的にお客様に喜ばれ、売り上げも伸びているので、間違った判断ではなかったと思います。冒頭の写真は、当社のノートPCに初採用された“日本専用”のACアダプターです。
このACアダプターは、L字型のDCプラグも同時に採用しました。L字型DCプラグは側面のスペースを節約したいという思いから生まれたデザインですが、ストレート型プラグがまだまだ一般的な中、この形状を標準採用するためには、メーカーの中でもロジカルな説明が必要になります。
例えば、側面のスペースを○%節約できる、ユーザーアンケートで○%の人々に求められている――といったデータとともに「採用しましょう」とプッシュするわけです。こんな工程を経て、ようやく製品化された際の喜びはひとしおです。
ここまで「利便性」に注目したローカライズ模様を紹介してきましたが、メーカーの中にいると、日本人独自の感性に気づくこともあります。
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