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どれも同じ? とんでもない! 「ACアダプター」に込めた開発者のこだわり新連載・“中の人”が明かすパソコン裏話(3/3 ページ)

» 2016年09月27日 09時00分 公開
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 その1つが、差し込み端子(プラグ)を折りたためる機構を持ったACアダプターが好まれる点です。

 「収納術」を仕事にしている人もいるくらい、私たち日本人は狭いスペースを有効に活用しようという優れた感性を持っています。ところが、海外にはそもそもコンセント自体が大きい国もあり、折りたためるような省スペースのACアダプターは珍しいのです。

 こうした点でも、グローバル企業ならではの壁にぶち当たることになります。多くの会社や組織に共通すると思いますが、全社で“共感”が得られないことを推し進めるのは容易ではありません。

 そこで、どこかで共感が得られる国や人がいないかを探します。実は、米国でも日本と同じコンセントが使えるので、米国のプロダクトチームの担当者が来日したときに「こういうACアダプターがあると便利だよね」と刷り込んでいきました。そうすることによって、自然と共感が得られ、話を進める土壌ができるのです。

 日本と米国で使えるACアダプターであれば、ある程度の出荷量が見込めることから、開発のハードルを下げることもできます。こうして、現在の主力機種のいくつかに採用されているACアダプターは、プラグが折りたためる機構と、L型のDCコネクターの両方を採用するに至ったわけです。

photophoto プラグを折りたたんだ状態(収納時)と立てた状態(利用時)

“1台3役”なACアダプターに注目

 最近、「USB-C」いうキーワードを耳にされた方も多いのではないかと思います。「USB-C」は表裏の区別なく使えるほか、多くの電気を流すことができ、スマートフォンやタブレット、ノートPCの充電に対応します。HPでも薄型軽量ノートや2-in-1タブレット、スマートフォンでUSB-C規格を採用しています。

photo USB-C規格を採用したACアダプター

 ACアダプターの供給能力や仕様にもよりますが、同じUSB-Cポートを備えたタブレットやスマートフォンならば、1つのACアダプターを共有することができます。つまり、ACアダプターを1つカバンに入れておけば、スマートフォンも、タブレットも、ノートPCもこれ1台で充電できるのです。

 USB-Cは業界標準であるため、メーカー間で互換性があるのも素晴らしい点です。メーカーとしてはACアダプターのコネクター形状が自社の製品だけに閉じていたほうが、もしかすると周辺機器の需要を囲い込みして売り上げが見込めるのかもしれません。しかし、ユーザーの視点で見た場合、1つのコネクター形状をすべてのメーカーが採用していたほうが、都合がいいのは確かでしょう。

 シンプルなようで奥深いACアダプターの世界。今度ノートPCや2-in-1タブレットの購入を検討する際は、ぜひACアダプターの仕様にも注目してみてください。

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著者:白木智幸(しろき・ともゆき)

日本HPパソコン&タブレットエバンジェリスト。パーソナルシステムズ事業本部に所属し、法人向けタブレット製品のプロダクトマネージャ(製品企画)とビジネスプラン(販売計画)を担当。PCやタブレットの楽しさや素晴らしさを広くお伝えすることを通じ、グローバル化の進む現代でよりよい働き方を実現するためのエッセンスを提供することがテーマ。


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