「ヤフオク!」はチケット専業ではなく、「チケット流通センター」は派手な広告はしていなかったため、音楽業界としても、それほど問題視していなかった。利用するユーザーの意識も、ちょっと“闇”っぽいとか、後ろめたい感情もあったと思う。
だがチケットキャンプのテレビCMによって、転売サイトがあたかも世の中に認められた“公式”というイメージになり、ユーザー側にも罪悪感がなくなってしまうと危機感を覚えた。そのため、まずはアーティストが声をあげ、チケットキャンプは公式ではなく、チケットの高額転売には反対だと明確に示すことが必要ではないかと考えた。
アーティストに声をかけたところ、あれだけの賛同が集まった(計172組・26の音楽イベントが賛同)。賛同者として載っていないアーティストも、話を聞いた全員が、チケットの高額転売に反対だと話していた。
――チケットキャンプは2013年にスタートした新興サービスだ。チケットキャンプによって転売市場は変化したのか。
ライブチケットの2次流通マーケットは500億円程度あり、うち6割・300億円近くをチケットキャンプが握っていると推定している。チケットキャンプ誕生以降、2次流通マーケットは2倍近くに急拡大し、転売チケットの価格も上がったと考えている。
――チケットキャンプと直接、交渉はしなかったのか?
もちろんした。チケットの転売も定価以下に収めてほしいなどの要求を出したが受け入れられず平行線にまま今日に至っている。
正直なところ、販売済みのチケットの2次流通は、メーカー(アーティストやコンサートプロモーター)にお伺いを立てなくても法的には問題ない。ただ、チケットは一般の工業製品と異なり、メーカーであるアーティストが意思を持っている特殊な商品。そういう商品に対して、もう少し配慮があってもよかったのではないか。アーティストとまったく関係ない人が、メーカーも知らないところで、専業として商品を扱い、もうけちゃうのは、ちょっと……。
チケットキャンプには、もう少し業界を研究していただき、音楽業界とコミュニケーションしてからビジネスを立ち上げて欲しかった。チケットキャンプのシステムや資本を使って、音楽業界にもユーザーにも役に立つ方向はあったはずだ。
高額転売チケットの購入でファンの財布が傷めば、音楽業界に流れるお金が減ってしまう。チケットキャンプは音楽業界がないと成り立たず、音楽業界を宿主とするといわば寄生虫だが、寄生虫だけが栄えると、やがては宿主を殺してしまう。
――転売が横行する背景には、日本のライブチケットの価格が極端に安く、ほとんどのライブで前の席も後ろの席も一律料金になっているせいだという指摘がある。人気アーティストのライブの最前列のチケットでも定価は5000円〜1万円程度。実際の市場価格を反映していないため、定価で手に入れて転売すれば、利益が得られることは明白だ。
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