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「留年は破滅ではない」 京大生向けメッセージに反響 「優しい」「社会人にも共通する」

» 2016年10月18日 14時59分 公開
[ITmedia]

 もしあなたが「留年したら終わりだ」とか「中退したら破滅だ」とか、悲壮な思いで考えているとしたら、冷静になって欲しい――京都大学が、留年に悩む学生向けにWebサイトで公表しているメッセージ「留年について」が、ネットで注目を浴びている。

 「留年は単に個人の失敗としてとらえられるべきものではない」と指摘した上で、留年の悪循環から脱出するための工夫や、留年や中退は「破滅」ではないことなどを語りかける内容で、「優しい」「社会人にも共通する話だ」とネットユーザーの反響を呼んでいる。

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 京大の学生や教職員を支援する学生総合支援センターのカウンセリングルームが公式Webサイトで公開した文書。

 京大全体の留年率は、ほかの大学と同等の約2割と説明。「これだけの人が留年したり退学するということは、留年や退学は、単に個人の失敗としてのみ捉えられるべきものではない。現在の日本の社会において大学というシステムは、一定数の留年や退学を生み出すようにできているものだ」と指摘する。

 留年を繰り返させる行動パターンとして、留年を家族や友人に隠そうとしたり、限界まで履修登録して一挙に挽回しようとしたり、「留年している自分には日々の生活を楽しむ権利などない」と考え、勉強だけに専念しようとしたり、「卒業しなければ生きていけない」と考える、時期尚早に「来年からがんばろう」と考える――などを挙げる。

 留年脱出のための工夫として、朝出かけるのがつらい人は、近所の自販機まで行って缶コーヒーを買って飲むなどの習慣を作ること、教室に知人がおらず、欠席時に授業関連情報を入手できない人は、京大生向けコミュニティーサイトやSNSなどを活用し、情報をもらうことなどを提案している。

 「留年したら終わりだ」「中退したら破滅だ」など悲壮な思いを持っている人には、「冷静になってほしい」と諭し、高校入学者100人のうち、53人はどこかで留年、中退または退職しているという研究を紹介。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、孫正義、タモリ、秋元康、堺雅人など大学を中退して社会で活躍している人も多数おり、「著名人に限らず、当たり前に普通に働いてこの社会を支えている大学中退者はいくらでもいる。留年経験者なら、なおのこと、たくさんいる」と解説する。

 退学したいと考えているが、退学したら「人生破滅」という恐怖のイメージから退学はできないという考えに傾いている人には、「一度、やめるという選択肢を落ち着いて現実的に考えてみてはどうでしょうか」と提案。「やめるという選択肢を十分に検討することで、続けるという選択は、より積極的で能動的なものになる」と指摘する。

 人生の岐路では「絶対に失敗のない完璧な決断などありえない。迷って当たり前、たじろいで当たり前」とし、「必要ならば一緒に考えていきましょう」と寄り添うとともに、「大学における進路変更がより自由に安心してできるような社会をみんなで実現していきたいものです」と締めくくっている。

photo メッセージの抜粋。「留年したら終わりだ」「中退したら破滅だ」など悲壮な思いを持っている人には、「冷静になってほしい」と諭している

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