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» 2016年11月02日 11時20分 公開

「太陽の塔」内部の生物模型の中に“ロボット”がいた──その動く姿を入手した

想定の160倍もの応募があったという「太陽の塔」内部の一般公開が行われた。だが46年前の初公開時、その光景は現在とまるで異なっていたようだ。

[太田智美,ITmedia]

 10月29〜30日、いよいよ「太陽の塔」内部の一般公開が行われた。太陽の塔といえば、1970年の大阪万博(日本万国博覧会)でシンボルになったあの建物だ。


「太陽の塔」内部 太陽の塔

 一般公開に先駆け、先日、太陽の塔内部の内覧会がメディア向けに行われた。その様子をテレビやネットのニュースで目にした人も多いだろう。一般向けに開かれた“内部再生前の最後の内覧会”では、定員500人の募集に対し、3万9853通(約8万人分)もの応募があったという。想定の160倍だ。

 筆者も現地に足を運んだ――すると、思いがけない情報を耳に入れた。「この生物模型の一部は動いていたんです」(大阪府日本万国博覧会記念公園事務所 塩野剛史さん)。


「太陽の塔」内部 「太陽の塔」内部の様子

「太陽の塔」内部 「太陽の塔」内部にいる恐竜の生物模型。これが動いていたという

 太陽の塔内部に飾られている生物模型は実に33種類、計292体。そのうちの一部(約40体)が動いていたという。ここにある生物たちは、単なる「模型」ではなく「ロボット」だというのだ。

 静止している現状でさえ心揺さぶられる光景だが、これらが動いていた空間はどんなものだったのか。筆者は東京に戻ってからというもの、資料探しに没頭。ネットで検索しても有益な情報は得られず、関係各所に問い合わせて資料を探した。

 しかし、動いていたのは今から46年も前のこと。当時の参加者たちが携帯電話などで動画を撮ってインターネット上にアップしているはずもなく、制作側が持っていた資料もほとんどが廃棄処分されている。大事に保管されていた貴重な資料も、ネット上で紹介するのは難しかった。


「太陽の塔」内部

「太陽の塔」内部

「太陽の塔」内部

 見たい。動く姿を一度でいいから見たい……そんな思いが、通じた。協力してくれたのは、大阪府日本万国博覧会記念公園事務所の塩野さん。この記事のために特別に掲載の許可を得た動画がこれだ。



 太陽の塔の下で揺れ動く鞭毛虫(ベンモウチュウ)にはモーターが仕込まれており、その動きは一体一体制御されている。恐竜(ブロントサウルス)の口はパクパクとゆっくり動き、マンモスは首を左右に振っている。なんという光景……。

 上に勢いよく伸びる「生命の樹」は、世界の五大州をイメージした色にペイント。夜光塗料が塗られており、ブラックライトを当てると浮き出て見えるような仕掛けになっている。

 生物は上に行くほど「進化」を意味し、33種類(ウミユリ、ポリプ、アメーバ、クラゲA、クラゲB、太陽虫、三葉虫、オルトセラス、キルトセラスドクリト、巻貝、アンモナイト、鞭毛虫、オウムガイ、サソリ、ドレパナスピス、ボスリオシピシ、魚類、マストドンサウルス、クリプトクレドウス、メソサウルス、ブロントサウルス、トラコドン、エダクオサウルス、プテラノドン、古代動物の骨格、マンモス、ゴリラ、オナガザル、オランウータン、チンパンジー、ネアンデルタール人、クロマニョン人)の生物模型たちが、たしかにこの世界にいたことを主張している。


「太陽の塔」内部

「太陽の塔」内部 壁一面に装飾されている赤い「ひだ」

 それらを囲っているのは、「生命の血流の流れ」「炎」とも呼ばれる赤く波打つ「生命体としてのひだ」である。このひだはデザインとしての役割だけでなく、塔内部で流れる音楽の反響板としての役割も担っている。

 流れる音楽は「生命の賛歌」。上からは女声のコーラスで「天上の歌」が流れ、下からは男性のコーラスで「地底の歌」が聞こえる。実は5分間を1サイクルとして独特な響きの音楽がループしている(来場者はその継ぎ目をほとんど感じることはない)。ちなみに万博当時は、スタッフが地下、地上、空中とローテーションで配置されていたようだ。それは、この「地上」空間があまりにも独特なため、スタッフがトランス状態に入り「(意識がどこかに)いってしまう」のを防ぐためだという。


「太陽の塔」内部 博覧会が始まる間際に、溶接の火花が飛び散って焦げたと言われる「ゴリラあたま」

 上階に行って上を見上げると、生命の木が途中で切れていることに気付くだろう。これには「そのあとは未来の人が作る」というメッセージが込められているのだと、塩野さんは話す。

 最上階には未来への階段が付いており、太陽の塔の「左手」部分に設置された階段側面には、階段がだんだん細くなっていくように見せるデザインが施されている。これは宇宙船をイメージした造りで、宇宙への道が果てしなく続くことを表しているという。


「太陽の塔」内部 生命の木が途中で切れている

「太陽の塔」内部 太陽の塔の「左手」部分内部

 一方「右手」の部分にはエスカレーターがあり、そこを上ると空中展示へと続いている。少し後ろ向きについてる両方の腕は、プロデューサーである岡本太郎さんのこだわりでもあったそうだ。天井はこれまでの「ひだ」ではなく波打つような模様であり、光が降り注ぐようにも見える。


「太陽の塔」内部 太陽の塔の「右手」部分内部

「太陽の塔」内部 「太陽の塔」内部天上

 もともとエスカレーターを置くだけのただの動線が、岡本太郎さんのプロデュースによってこのような展示空間へと変化した。本来は博覧会のためだけに建てられ、万博終了後すぐに撤去されるはずだった太陽の塔は、多くの人の署名によって建て壊しが延期。今は「建築物」から「工作物」という扱いに変化し、その姿を残している。


「太陽の塔」内部

 大阪万博終了後、太陽の塔の内部が公開されたのは今回が初めて。今後「ひだ」をいったん取り外して厚さ20センチの壁を作るほか、耐震工事と合わせて「生命の樹」や「地底の太陽」など内部の展示物を建立当時の姿に再生するという。なお、10月29〜30日に行われた一般公開では1階のみの観覧が可能だったが、改修後の2030年3月の公開時には上部まで上れるようになるという。

 改修後は建立当時から少し数を減らし、200体ほどの生物模型を展示する予定。生物模型が再び動くことは現時点で予定されていないが、この躍動感あふれる不思議な空間に再び足を踏み入れる日が楽しみだ。

太田智美

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