NTTドコモが、携帯電話と同じLTEネットワークを使ってドローンを制御できる「セルラードローン」の実証実験を9月から神奈川県横須賀地区で行っている。11月17〜18日にドコモR&Dセンタで開催中の「DOCOMO R&D Open House 2016」でその実機が公開された。
国内で現在販売されているドローンは主に近距離通信でコントロールするものだ。LTEでドローンを制御できれば、離島への物流など、利用シーンがさらに広がる可能性がある。実用化は2018年ごろを見込んでいるという。
従来、国内において携帯電話の通信機能を上空で使用することは電波法で禁じられていた。しかし、ドローンを利用した広域での制御や映像伝送へのニーズを受け、総務省は7月に省令を改正。携帯電話事業者による免許申請の範囲内で、携帯電話の上空利用が可能になった。
ドコモは9月6日に国内初となる実用化試験局免許を取得し、携帯電話回線を活用したセルラードローンの実証実験を開始。飛行情報の即時モニタリングや、遠隔操作での飛行制御、ドローンで撮影している映像のストリーミングに成功したという。
セルラードローンのメリットの1つとして、同社イノベーション統括部の梅澤良夫 事業創出・投資担当部長は「パイロット不足問題の解消」を挙げる。「現在はドローン1台につき1人、パイロットが現地に行く必要がある。1万台のドローンが飛ぶようになったら、1万人のパイロット──いつか無理が来る」。LTEで遠隔地のドローンを操作できれば、いくつものドローンを集中制御できる可能性がある。
なぜドコモがセルラードローンの実証実験に力を入れるのか。梅澤担当部長は「こういった実証実験は『ドローンを使っていろいろなことができますよ』となりがち。通信キャリアとしては、ドローンから発せられるLTEの電波が既存のモバイルネットワークに与える影響を調査しておきたい」と話す。
ドローンにLTEモジュールを搭載して飛ばすと、電波が上空から降りてくる状態になり、地上で携帯電話が使いづらくなるといった影響があるという。また現在の携帯電話基地局は、下に向かって電波を発する仕組みになっているため、上空に電波を飛ばすためのものではない。「恐らく(上空は)電波的にむちゃくちゃな状況になっていると思う」(梅澤担当部長)。
そんな状況で、本当にLTEを使ったドローンが使えるのか、運用はどうすればいいのか――実証実験にはこれらの確認を進める目的もある。現時点ではコストの問題から既存基地局を使うものの、今後、ドローンが空を飛び交う世界になったら、空に向けて電波を発する基地局が開発される可能性もありそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR