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目の難病、iPS細胞で光感知 マウスで成功 理研

» 2017年01月11日 11時20分 公開
[ITmedia]

 理化学研究所は1月11日、光を感じる目の組織に異常が起きる「網膜変性」のマウスに、ほかのマウスのiPS細胞で作った網膜を移植したところ、光への反応が回復することを確認したと発表した。人の臨床研究への応用を目指し、研究を進める。

画像 眼球と網膜の基本構造

 網膜変性は、光を感じる組織である網膜に異常がみられる病気で、視野狭窄・視力低下が起きたり失明につながる。網膜は再生力が低く自然治癒は見込めないという。

 理研は今回、網膜変性末期のマウスに、別のマウスから樹立したiPS細胞で作った網膜組織を移植。光を点灯させた5秒後にマウスに電気ショックを与える訓練を行い、光に対する反応が変化するか確かめた。

画像 マウスの行動実験の仕組みと実験装置
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 マウスは、光に気づいて5秒以内に反対側の部屋に移動すればショックを避けられるため、移植によって光がよく見えるようになっていれば、電気ショックの回避率が上がる。実験では、移植後のマウス21匹のうち9匹で、光に対する行動パターンが改善し、電気ショックの回避率が上がった。

 今回移植した部分は全体の視野の5%にも満たないため、網膜のより広い部分に移植すれば、回避率がさらに向上するとみている。

画像 マウスiPS細胞から分化させた網膜組織を移植した網膜変性末期マウスの網膜。網膜変性末期マウスの双極細胞(緑)の軸索末端と移植片内の視細胞のシナプス末端(赤)が接触していることが分かる

 また、移植片と移植先の細胞が接触し、シナプスを形成していることも確認。移植後のマウスの網膜を解析したところ、移植部分に網膜全体としての光応答性の反応が検出された。

 実験チームは現在、ヒトES細胞やiPS細胞由来網膜でも視機能の検証を行っており、臨床研究への応用につなげる。

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