オーディオベンチャーのambieは2月9日、耳の穴をふさがずに音楽を聴けるイヤフォン「ambie sound earcuffs」(アンビー サウンド イヤカフ)を発表した。耳たぶに挟むイヤーカフ形状で、長時間装着しても負担が少なく、音楽を聴きながら周囲の音も聞き取れるという。公式Webサイトや実店舗で同日から順次発売する。価格は5940円(税込)。
「人と音楽の関係が変わり始めている」──ambie開発のきっかけは、多くのユーザーが“ながら聴きスタイル”に移行していることにあると、開発責任者の三原良太さんは説明する。
「定額制コンテンツが普及し、音楽の聴き方がアーティスト・アルバム単位から感情・シーン別のプレイリストで聴くスタイルに移りつつある。音楽はコンテンツに没入して聴くスタイルから、環境として楽しむものに変化した」(三原さん)
Apple MusicやGoogle Play Music、AWA、Spotifyなど、近年は定額制の音楽配信サービスの登場によって音楽との関わり方が変化した。ユーザーが日々の生活に大量の音楽を取り入れられる環境が整った一方、従来のイヤフォンやスピーカーは必ずしも最適なものではないという。
「音楽をBGMのように聴く需要が増えた一方で、従来のイヤフォンは音楽を聴いていると周囲の人とコミュニケーションが取れなかったり、スピーカーは周囲の人にも音楽が聞こえてしまったりする。ambieはこれらを解決し、新しい音楽体験ができる」(三原さん)
これまで、耳の穴をふさがないイヤフォンとして骨伝導を活用した製品も市場に存在しているが、周囲への音漏れと音質に問題があったという。また、Appleの「iPhone 7」がイヤフォンジャックを廃止したことを皮切りに、ワイヤレスイヤフォン市場も盛り上がりを見せているが、ambieが有線タイプである点については「気軽に手に取っていただくため」(松本さん)としている。
ambie sound earcuffsが一般的なイヤフォンと大きく異なる点は、本体を耳たぶに挟む装着方法にある。最初は1人で装着するのが難しく、鏡を見ながら両手を使って苦労した。数回使って慣れてくると、ベストポジションが自然と理解できて装着できるようになる。本体はシリコン素材の柔らかい手触りで、装着中の負担は非常に少ない。
耳の後ろに位置するスピーカーユニットから再生された音は、内部のパイプを通って本体先端にある小さな穴から鳴る仕組み。聞こえてくるのはボーカルとメロディーを中心とした中高音域のみで、低音はバッサリとそぎ落とされている。音楽の迫力は感じられないが、雰囲気を楽しむことに特化しているといえる。自宅でじっくり音楽鑑賞するイヤフォンではなく、スポーツやアクティビティーのお供に適したものだ。
気になるのは周囲への音漏れだが、通常のインイヤータイプと比べて多少大きく感じられるものの、それほどは変わらない。パイプから出る音の指向性がある程度確保されているためだろう。周囲の音が装着中でも違和感なく聞こえるため、「再生している音楽が周囲に聞こえているのではないか」という奇妙な感覚に慣れるまで時間がかかりそうだ。
製品を発表したambieは、ベンチャーキャピタルのWiLとソニービデオ&サウンドプロダクツが共同出資して設立した合弁会社。イヤフォンのようなオーディオ製品や家電を取り扱うベンチャーと固定するのではなく、ライフスタイルやファッション、エンターテインメント、ヘルスケアなど、さまざまな分野と音楽をつなげて新しい価値を生み出していきたいという。
同社の松本真尚代表取締役は、企業理念として人と音の関わり方を変えていきたいと話す。
「大企業は優秀な人材や豊富な資金、IP(知的財産)を持っている。それらをベンチャーと組み合わせて世界に出していきたい。ソニーだけでなく、さまざまな企業と組んで多様性を目指す」(松本代表取締役)
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