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人工知能が作ったものは誰のモノ? 弁護士が体を張って解説してみたSTORIA法律事務所ブログ(2/3 ページ)

» 2017年03月01日 08時00分 公開
[柿沼太一ITmedia]

 あくまで、原著作物の「表現上の本質的な特徴を感得できる場合」だけが二次的著作物になるのであって、そうでない場合は別の著作物になります。この場合は、原著作物の著作権者は何の権利も持ちません。まずここまで押さえておいて、次に行きましょう。

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人工知能が制作に関与した場合の著作権

 今回のサービスは「元になる写真にスタイルを付与した新作品を人工知能が制作する」というものです。ですのでこの場合、以下の2パターンがあることになります。

1 新作品が元写真の二次的著作物になる場合、つまり、新作品が元写真の「表現上の本質的な特徴を感得できる場合」

2 新作品が元作品と別個の著作物になる場合

 お待たせしました。先ほどのサービスを実際に利用して考えてみましょう。プロのカメラマンの方に撮影していただいた柿沼の写真を使います。

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 外で撮影した写真なので、適度に背景が複雑で素材として面白いのではないかと思います。まず、この「柿沼写真」に「ムンクの叫び」テイストを付加してみました。

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 言うまでもなく、とても有名な絵です。これを「スタイル」として追加すると──。

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 すごい。テイストがほぼ完璧に再現されていますね。元写真は、2015年3月に事務所開設した際、事務所Webサイト用に撮影したものですが、ムンクテイストの写真を見ると、新事務所がうまくいくとは到底思えません

 ただ、それほど元写真の構図などは崩れておらず、あくまでテイストだけが「叫び」風味になった、というだけです。ですので、先ほどの2つのパターンのうち

1 新作品が柿沼写真の「表現上の本質的な特徴を感得できる場合」

に該当することになります。

 この場合の著作権関係はどうなるのでしょうか。この場合、新作品を制作しているのはあくまで人工知能です。人工知能は「人」ではありませんから、人工知能が著作者となることはありません。では、人工知能の開発者が著作者になるのか、というとこれもちょっと疑問があります。

 日本の著作権法上では、著作者は「著作物を創作する者」とされているのですが、人工知能といういわば「道具」を開発する行為が「創作」とは評価されないのではないかと思うからです。ましてや「submit」ボタンをポチッと押しただけの私は全く“創作”行為をしていませんので、当然著作者ではありません。そうすると、結局このパターンの場合は、元写真の著作者だけが新作品について著作権を有するということになります。

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