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日経「AI記者」の衝撃 開発の背景に「危機感」(3/4 ページ)

» 2017年03月03日 11時22分 公開
[岡田有花ITmedia]

 「決算サマリー開発中、証券部にプロトタイプを持って行ったが、ネガティブな反応はなかった。むしろ、『こういう感じの仕事も代わりにできる?』など、ほかの仕事もAIに任せられないか聞かれた」(デジタル編成局の江村亮一編成部長)

 証券部の記者の仕事は、新聞やオンラインに掲載する決算やマーケット関連記事の執筆、季刊誌「日経会社情報」の記事執筆など膨大にあるという。その一方で、記者の人数は以前より減っており、1人当たりの業務量は増えている。

 「決算記事は数字のミスは絶対に許されず、神経を使う仕事だが、AIには数字の間違いはほとんどない。決算速報をAIに任せることができれば、決算解説記事や企画記事、取材などによりマンパワーを振り分けられる」(江村部長)

 デジタルメディア局の木原誠部長は、「日経としての売り物にする“読ませる記事”は当然、人が書くものだ」と話す。同社は「日経テレコン」など、膨大なデータ量が物を言うデータベース事業も展開。データベース事業にAIを積極活用することで、より付加価値を高めた企業向け情報サービスを提供していく考えだ。

 「AIは『広く浅く早く』に向いている」と藤原さんは指摘する。「今後2〜3年で、『広く浅く早く』が適した分野にAIが適用され、深掘りは人間の記者が担当するという棲み分けが進んでいくのではないか」。

 ちなみに同社は、AIが書いた決算速報は「決算サマリー」と呼び、記者が書く「記事」とは完全に区別しているという。

「うかうかしていると怖い」 危機感バネに技術開発

 同社のオンライン事業では、月額4200円(税込、以下同)の「日経電子版」が、有料会員数50万人をかかえるなど経済メディアで不動の地位を築いている。だが、「うかうかしていると怖いと日々感じている」と江村部長は危機感をあらわにする。

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