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カード番号とセキュリティコードが記載されていない新しい「クレジットカード」、ルクセンブルクのICTイベントで展示

» 2017年05月10日 11時42分 公開
[太田智美ITmedia]

 ルクセンブルク最大規模のICT(情報通信技術)イベント「ICT Spring Europe 2017」(5月9〜10日)が開催されている。イベントでは数多くのスタートアップ企業がブースを出展。その中で、ちょっとおもしろいものを見つけた。新しいクレジットカードである。


新しいクレジットカード

新しいクレジットカード ディスプレイ部分に番号が表示される

新しいクレジットカード 中がどうなっているかも見せてもらった

 出展していたのは、APSというクレジットカード認証システムの会社。通常、クレジットカードの表にはカード番号が、裏にはセキュリティコードが記載されているが、APSが開発しているクレジットカードにはそれらの数字の記載がない。代わりに付いているのが、薄型のディスプレイとボタンだ。

 聞けば、このカードはスマートフォンとペアリングして使うという。カード会社から送られてきたパスワードを入力し、クレジットカードに付いたボタンを押してBluetoothで自身のスマートフォンとペアリングすれば準備はOK。スマートフォンと連携することでカード番号やセキュリティコードがディスプレイ部分に表示されるため、万が一カードを落としてしまっても不正利用されるリスクが低くなるという理屈だ。

 すでにプロトタイプは完成しており、Mastercardと実現に向けてのテストを進めている段階。現在、カードの耐久性やBluetoothのテストをしており、うまくいけば2017年9月に審査をパスする予定だという。Mastercardの審査に通り次第、ルクセンブルクの主要3銀行でのフィールドテストをするところまで決定している。日本では、大日本印刷がこの技術に対して興味を示しているという。



 今後はVISAなど他のクレジットカード会社にもアプローチしていくほか、ハード面でのアップデートも予定。ワンタイムパスワードのように、カード番号やセキュリティコードを毎回変えることや、ボタンの消耗をなくすためカードのタップで認証できるようなプロダクトも技術的には問題なくできるという。

 ただし、これらのアップデートはまだ技術的な部分以外での実現が難しいのが現状。ルクセンブルクは銀行ごとにサーバを持っておらず、サーバは別の会社が管理しているため、インフラとして使える環境にないのだという。この点では、イギリスや日本が一歩リード。銀行がアルゴリズムを保持しなければならないのだが、イギリスではこれに対応した環境がすでに整っており、日本は今準備中なのだという。

太田智美

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