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キリンビールの「ゆっくり届くボタン」に込めた思い 「人間、ずっと頑張るってできない」(1/3 ページ)

» 2017年05月25日 07時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 「忘れたころに商品が届く」――せかせかとした世の流れにあらがう、ゆるい企画をキリンビールが立ち上げた。

 その名は「スローボタン」。このボタンを押すと、忘れたころに「淡麗グリーンラベル」の6缶パックが届けられる仕組みだ。淡麗グリーンラベルのプレゼントキャンペーンのために開発されたこのボタンは、外側が木曽ヒノキでできており、顔に近づけるとヒノキの香りがふわっと鼻に抜ける。実際の製品からも、せかせかとした気持ちを落ち着かせたいという思いが伝わってくるようだ。

 ある意味、世の流れに一石を投じるこの企画。キリンビールはなぜこれを始めたのか。デジタルマーケティング部でグリーンラベルの企画を担当している野際陽介さんに話を聞いた。

(追記:2017年5月29日 キリンから、野際さんの肩書きについて指摘があったため修正しました)

公園で淡麗グリーンラベルとスローボタンを持ってニコニコの野際さん

 同社がある中野セントラルパークサウスに行くと、「せっかくなら隣の公園でお話ししませんか?」と公園の芝生にシートを敷いてインタビューをすることになった。インタビューまでゆるくしてくるとは、野際さん、できる男だ……!

芝生に座るためのシートもグリーンラベル印という徹底ぶり

きっかけは?

―― 日も傾いてきて、完全に仕事という雰囲気ではありませんが、お話を聞かせていただこうと思います。

野際さん よろしくお願いいたします。

―― まず、作ったきっかけを教えてください。

野際さん もともと、グリーンラベルのブランドって普段仕事や家事を頑張っている方々に愛用していただいているというのが根底にあります。そんなグリーンラベルの提供価値をあらためて伝えるのに、どんな形があるだろうと企画を練っていました。

 その中で、最近の「働き方改革」や配送問題など、世の流れと掛け合わせて考えて、「ゆっくり過ごすのもいいんじゃない?」ということをお客さまに伝えられるのがいいのではないか、ということでスローボタンの企画が生まれました。

語る野際さん、聞く筆者

―― ボタンを押すと発注できるという仕組みは、他の通信販売サイトでも先例がありますよね。やはり発想の元ではあったのですか?

野際さん アイデアの元としては「そういうものがあるよね」というのは確かにありました。既存のものを全くそのままなぞっても仕方がないですし、こういった仕組みとグリーンラベルの世界観を掛け合わせるとどうなるか、と考えた結果が「ゆっくり届くボタン」ということです。

 最近はなんでもスピード優先じゃないですか。たまにはちょっと立ち止まって、振り返るというかゆっくり過ごす時間も必要だと思うのです。息抜きがあるからこそ人は頑張れるわけで、ずっと走り続ける、頑張るなんて、人間できないですよね。だから、「ちょっと立ち止まってみようよ」ということを、グリーンラベルのキャンペーンでお客さまに伝えらればと。

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