──面白い発想ですね。坂口教官が影響された女性はいますか?
坂口 私が当時影響されたのは藤原紀香さんですね。18歳でデビューしたときに目が鋭い感じに見えたのです。山口百恵さんとは明らかに違いました。
シトロエンやプジョーなど、海外の車もだんだんと目が後ろにつり上がってきた。そういう意味では、海外のカーデザインも女性の化粧の傾向と連動しているのではと思っています。
──男性のファッションなどには影響されないのでしょうか
坂口 実は、車のエクステリアデザイン(外観)を手掛けている女性ってあまりいないのが現状です。車は男性のおもちゃみたいなところがあって、着飾るジャケットみたいなものでもある。女性を意識しているところはあるはずです。
その時代の“かっこよさ”とは何か。ようは、他にはないものを常に探してデザインに落とし込む。それは“情感を表す”ということ。これがデザイナーの仕事です。
──女性の化粧が関係してくるとは想像もしていませんでした。てっきり成形技術の進歩によるものかと
内藤 プラスチック素材が(ボディーに)使えるようになるなど、技術の進歩によってデザインの自由度が増えたというのももちろんあります。
坂口 特に「LED」だよね。
内藤 ヘッドランプやテールランプを細くできるようになったのはLEDのおかげです。「(従来の電球に比べて小さい)LEDに合わせた顔(デザイン)ってどういう顔?」となると「きつめ」「シャープ」な顔になるのかなと。初代ヴィッツの大きくて丸いテールランプにLEDを取り付けても似合わないですよね。
坂口 「軽薄短小」(けいはくたんしょう)──軽くて薄くて短くて小さく、これは技術発展の典型的なもの。デザインはこれらを応用するだけです。
──技術の進歩に合わせてデザインが変わると
内藤 デザインと技術はリンクしています。以前、「車のデザインを大きく変える方法とは何か」ということを話していたのですが、技術側から渡される「車の設計図」や「動く仕組み」のような“要素要件”が変わらないと、クルマのデザインも大幅には変わりません。
今は一番微妙な時期ですね。電気自動車のような新しい車が出てきて、エンジンが不要になった。さらに技術が進歩すれば、ホイールの中に動力のモーターが入るようになる。
となるとフロント部分には何もいらなくなるので、デザインが大きく変わる。技術とデザインでは、デザインの前に技術の部分が大きいのかなと私は思います。今は大きな時代の節目に差し掛かっていますね。
これからの若いデザイナーは、既成の概念を外してデザインしていかないと新しいモノにはならない。最近はハンドルがない自動車も登場し始めましたし、もっと新しいインテリアが求められる気がします。
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