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“乗り捨て”をどう解決? 世界で広がる「自転車シェアサービス」の今“日本が知らない”海外のIT(2/2 ページ)

» 2017年07月27日 07時00分 公開
[細谷元ITmedia]
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 街中を歩いてみると、oBikeとMobikeの自転車を目にする頻度は非常に多いが、ofoはほとんど見かけない。シンガポール国内の他メディアでもofoの自転車が見つけにくいことに言及している。

 前述の通り、oBikeは国内に1000台の自転車を配置済みという。Mobikeも17年中に1000台の配置を目標としている。一方で、ofoは最近になって500台を導入すると発表したばかり。やはり配置台数に開きがあるようだ。

 さらに、ofoのサービスはGPS非対応で、アプリの地図上で自転車の位置を特定できない。一方のoBikeとMobikeの自転車はGPS対応で、アプリの地図上で検索できる。当たり前だが、見つけられないものは利用できない。ofoが今後取り組むべき重要課題だ。

“乗り捨て”問題を解決する方法は?

 街中の至る所で利用できる便利な自転車シェアリングサービスだが、課題がないわけではない。最も懸念されているのは、自転車の違法駐輪、つまり“乗り捨て”だ。国立公園や私有地など、指定場所以外に駐輪した自転車に対して、公園利用者や周辺住民などからクレームがあがっている。

bike アプリからoBikeの自転車を検索。非常に多くの自転車を見つけられる

 こうした違法駐輪が増えればサービスの存続が危ぶまれる。各社は、違法駐輪を防ぐために、クレジットポイント制を導入し、ルール通りの利用にインセンティブを設けている。各社のクレジットポイント制は同じような仕組みだ。その詳細をoBikeの例で見てみたい。

 oBikeのクレジットポイント制度では、まずユーザーに100ポイントのクレジットが与えられ、優良ユーザーにはポイント加算、ルール違反者にはポイント減算の措置をする。

 例えば、自転車を乗り捨てたり、ロックをし忘れたりすると、20ポイント減算する。一方で、故障した自転車を見つけて報告した場合や、乗り捨てされた自転車を報告した場合は23ポイントを加算する。

 もし、ルール違反を重ねてユーザーのクレジットポイントが60以上80未満になった場合、サービス利用料は15分あたり5SGDに、60未満の場合15分あたり50SGDに跳ね上がる。

 一方で、181ポイント以上稼いだ優良ユーザーには、何らかの報酬が与えられるようだが、現時点ではどのような報酬なのか詳細は明らかになっていない。

 シンガポールで展開する3社のサービスは、東京・千代田区の自転車シェアリングサービス「ちよくる」のように決められた場所に自転車を返却するという仕組みではなく、指定場所であればどこにでも駐輪できる仕組みだ。

 この「指定場所」という定義がかなり広く、実質ほとんどの場所に駐輪できると解釈されてしまっており、これも違法駐輪が多い1つの要因になっているようだ。

 実際、oBikeのWebサイトでは返却に関して「自転車は、指定された公共の駐輪エリアに返却してください」としか記載されておらず、ユーザーの混乱を招いているといえる。この問題に対して、oBikeは返却可能な場所をアプリの地図上で示すなど、返却場所を明確にするよう努めている。また、Mobikeも新たに自転車駐輪スペースを開設するなどして違法駐輪対策を進める。

bike oBikeアプリが示すPマークは、指定の駐輪エリア(撮影:細谷元)

 このような状況に対して、行政側から規制をかけるなどの目立った動きはない。もともと自転車シェアリングを主導する計画であったことを考えると、民間での発展を後押しするスタンスなのだろう。

 今後自転車シェアリングは、バスやMRT(大量高速輸送)地下鉄などの公共交通機関と連携するサービスとしてだけでなく、商業施設やイベントへの集客手段、社会・商業インフラの1つとしても発展していく可能性を秘めている。

 シンガポールにおける自転車シェアリング市場もまだまだ発展途上だが、クレジットポイント制やモバイルファースト、GPSの重要性など参考にできることは多いはずだ。

ライター

執筆:細谷元

編集:岡徳之(Livit)


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