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2度の行政処分「みんなのクレジット」、わずかに黒字「NOKIZAL」決算ピックアップ

» 2017年09月15日 15時39分 公開
[NOKIZALITmedia]

(編集部注)本記事は、執筆時に公開されていた決算公告に基づいたものです。

 みんなのクレジット(東京都渋谷区)が9月15日、官報に掲載した2017年4月期(16年5月〜17年4月)決算公告によれば、当期純利益は278万円、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は95万円だった。

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 みんなのクレジットは15年設立。資金を借りたい企業と貸したい投資家をネット上でマッチングするソーシャルレンディングサービスを運営している。年利14.5%のうたい文句やキャッシュバックなどを積極的にプロモーションし、Fintechブームの追い風も受け、サービス開始から1年足らずで40億円を超える資金を集めた。

 しかし17年3月に金融庁から金融商品取引法で、8月には東京都から貸金業法で、1カ月間の業務停止と改善命令を受けると、管理運営体制の不備が発覚。(1)サイト上で不動産投資や中小企業支援をうたい資金を集めながら、債務超過状態の親会社やグループ会社に貸付け、(2)担保になる不動産や有価証券をほとんど確保しておらず、(3)集めた資金をそのまま償還資金に充てたり、代表者個人の借入返済に充てる――など、ずさんな点が指摘されている。

 都の業務停止は9月8日付で解除されたが、内部管理体制が整うまでは配当や償還のみで、新規ローンファンドの募集も休止するとしている。

photo みんなのクレジットのニュースリリースより

ここがポイント

 こうした話題になると、必ずと言っていいほど「ポンジ・スキーム」という言葉が出てきます。これは1910〜20年代に米国で活動した、伝説的な詐欺師チャールズ・ポンジに由来します。彼は、海外購入の国際返信切手と実際の外貨交換レートの差額を利用して高利回りを得られる――という触れ込みで大金を集めましたが、実際は切手を購入せずにそのまま出資者への配当に充てていました。

 いわゆる“自転車操業”という意味合いでは「ネズミ講」(無限連鎖講)にも近いですが、階層構造を取っていないのでネズミ講よりもシンプルとも言えます。しかし仕組みのアレンジがしやすいのか、定期的に社会問題になるような事件が起きています。11年に経営破綻した「安愚楽牧場」も一例です。

 最近、Fintechブームの高まりの中で、「VALU」「CASH」「Timebank」など、お金の流動性をネットやテクノロジーを介して高めていくサービスを見かけることが増えました。「金融」は最も古い部類に入り、規制の多い業態です。そんな金融を今の時代にマッチさせることは、確かに意味のあることですし、ビジネスチャンスも大きいです。

 ただ、金融に規制が多いのは、それだけポンジ・スキームのような痛みを過去の人類が繰り返してきた“知恵の結晶”――という見方もできます。極論を言えば、資本主義とポンジ・スキームの差は「預かった資金を双方の約束にのっとり運用するか」という違いでしかなく、規制はその制御のためにあります。

 今回のみんなのクレジットの決算を見る限り、純利益も利益剰余金もそうですが、流動資産と流動負債のバランスもギリギリの数字が並んでいます。負の歴史は繰り返すのか、是々非々でまっとうなビジネスに変われるのか、注目したいところです。

みんなのクレジットの過去業績、他の企業情報は「NOKIZAL」で確認できます

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《著者紹介》

平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。

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