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体に背負う「バックパック型PC」は何に使う?“中の人”が明かすパソコン裏話

» 2017年10月02日 08時00分 公開

 こんにちは、日本HPでPCの製品企画を担当している白木智幸です。この連載では、PCの周辺機器やパーツ、サポートの秘密、そして次世代のPCにつながる技術などを広く紹介しています。

 突然ですが、皆さんは“体に背負って使うPC”が各メーカーから続々と登場しているのをご存じですか? デスクトップPCでもノートPCでもない、身に付けられる「バックパック型PC」は、どのような場面で利用されるのでしょうか。

photo 背負いながら使うバックパック型PC

PCを背負って使えるメリットとは?

 実はこのバックパック型PC、話題のVR(仮想現実)に特化しています。説明の前に、まずはVRについて整理しておきましょう。VRを楽しむために必要な周辺機器は、VR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)と、スマートフォンまたはハイスペックPC、ゲーム機などが必要です。

 最も手軽に楽しめるのは、数千円程度で販売されているスマホ用の簡易VRゴーグルで360度動画を再生する方法です。YouTubeアプリでVR対応の動画を検索すれば結構な数が出てきますので、それらを見るだけでもかなり堪能できます。

photo YouTubeは360度動画のアップロード、再生に対応している

 VR対応の動画は3D映画を見ているような感覚に近いです。スマホ内蔵のセンサーを活用することで、動画内で顔を向けた方向に視点を動かすことができます。まるでその場にいるような気分になりますが、これらはあくまで撮影された動画を再生しているだけ。残念ながら、現時点でユーザーが動画の中を自由に動き回ったりものに触れたりすることはできません。仮想空間への没入感もさほど高くありません。

 一方、少し値段は張りますがゲーム機やPCと接続するハイスペックなVR機器を使ったVRゲームは、まさにリアルタイムでレンダリングされるゲームの世界で動き回ることができます。ゲームの中で手を動かしたり、ものをつかんだりしたときの没入感は素晴らしいものがあります。

 VRゲームにも多くの種類があります。操縦席に乗り込んで乗り物を運転するもの、遮蔽(しゃへい)物に隠れながら銃で戦うもの、高層ビルの屋上で綱渡りをするものなど。プレイヤーが実際に歩く、しゃがむ、のぞき込む、移動するといった動作がゲームにそのまま反映されるパターンも少なくありません。

photo バンダイナムコエンターテインメント本社内にて

 座って楽しむゲームであれば、プレーヤーが大きく動く必要はないため通常のデスクトップPCにVR HMDを接続した状態でも十分楽しめます。しかし、プレイヤーが広い部屋を歩き回るタイプのゲームでは、VR HMDとPCを接続するケーブルが邪魔となり、没入感を損なってしまいます。

 このようなシーンで活躍するのがバックパック型PCです。高性能なグラフィックス機能と大容量バッテリーを内蔵し、単体でVR HMDを動作できるスペックを持っています。

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 VR HMDと背負っているバックパック型PCはケーブルで接続する必要がありますが、デスクトップPCに比べれば自由度は圧倒的に高いです。ケーブルなどの存在を気にせず動き回れるため、仮想空間をフルに堪能できます。

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 ちょうど酸素ボンベを背負って海に潜るスキューバダイビングに似たような感覚といえば分かりやすいでしょうか。船から酸素をケーブルで送りながら潜る潜水服と比べると、自由度の高さがイメージできると思います。現在はVRが楽しめるゲームセンターなどを中心に採用が進んでいます。

 バックパック型PCは、VRで活用されるのはもちろん、工業デザインの分野でも活躍することが期待されています。例えば自動車のクレイモデルを自由に動きながらVR空間上で作ったり、プロトタイプの3Dデザインデータを内側からVRで確認したりする場面で、煩わしいケーブルを気にすることなくデザイン作業に没頭できるのです。

photo 自動車のデザインや、3D CADによる建築設計、医療分野では立体的な画像によるカンファレンスなど、幅広い産業でVRの利用が検討されている

 世界各国の拠点から技術者がリモートで1つの空間を共有し、共同作業するといった芸当もデジタルの世界であれば可能でしょう。

 いかがでしたでしょうか。これから先、バックパック型PCを仕事やプライベートで活用する機会がそう遠くない未来にやってくるかもしれません。

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著者:白木智幸(しろき・ともゆき)

日本HP PC&タブレットエバンジェリスト。パーソナルシステムズ事業本部に所属し、法人向けタブレット製品のプロダクトマネージャ(製品企画)とビジネスプラン(販売計画)を担当。PCやタブレットの楽しさや素晴らしさを広くお伝えすることを通じ、グローバル化の進む現代でよりよい働き方を実現するためのエッセンスを提供することがテーマ。


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