宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月18日、月の地下に巨大な空洞があることが、国際共同研究チームの調査で分かったと発表した。月周回衛星「かぐや」で得したデータを解析して判明した。空洞の幅は数十メートルから150メートル、長さは約50キロにわたるとみており、巨大な基地建設などに活用できる可能性があるとしている。
月には、かつて溶岩が流れた後、地下に形成される空洞「溶岩チューブ」があると考えられていた。溶岩チューブ内は、放射線などの影響を避けられるため、月面基地建設地として期待できるほか、隕石などで破壊されていない新鮮な岩石があり、研究にも有益だと考えられていた。ただこれまでの研究では、その存在は確認されていなかった。
2009年、日本の月周回衛星「かぐや」の地形カメラが、直径・深さともに50メートルの縦穴を、月の火山地域「マリウス丘」に発見。地下空洞の上に隕石などが衝突して開いた穴だと考えられた。さらに、米国が09年に打ち上げた「ルナー・リコネサンス・オービター」のカメラで、その縦穴の底には、数十メートル以上の空間が広がっていることが確認された。
月周回衛星「かぐや」には、電波を送信し、その反射波を受信することで、月の地下構造を調べられる「月レーダサウンダー」が搭載されていた。マリウス丘で発見された縦穴付近で、月レーダサウンダーの反射波データを調べたところ、地下空洞の存在と、空洞の床の存在を示す可能性がある特徴が見つかった。
この地下空洞があるとみられる位置は、米国の探査機「グレイル」の重力場データで検出された、質量密度の低い領域とも一致。「この地域に、未崩壊の地下空洞(溶岩チューブ)が存在していることが確実になったといえる」としている。空洞の幅は数十メートルから150メートル、長さは約50キロにわたっており、「都市レベルの基地を作ることができるほど巨大」とみている。
今後はさらに領域を広げて探索し、最終的には月全球を探索する計画。月表面の物質や地形、地場などのデータを参考に、地下空洞の検出をさらに進めていく。
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