“日本が知らない”海外のIT
中国5.5兆ドル市場狙う アリペイの「顔認証決済」
5.5兆ドル市場を狙う アリペイの「顔認証決済」
デビットカード、ウォレットアプリ、QRコードなどを活用した「決済のキャッシュレス化」が加速している。モバイル決済と呼ばれるこれらの市場で、いま最も注目を集めているのが中国だ。その市場規模は5.5兆ドル(約660兆円)といわれており、消費大国である米国市場(1120億ドル=約13兆円)の50倍の規模を誇る(Forrester Research調べ)。
14億人に迫る人口を抱えるだけでなく、個人所得の伸びしろが大きい中国では、ネットショップの需要が爆発的に伸びている。このためモバイル決済市場への期待も大きく、大量の投資資金が流れ込んでいる。中国のモバイル決済アプリ市場は、アリババグループのモバイル決済プラットフォーム「アリペイ」と、IT大手テンセントの「テンペイ」の2強・寡占状態といわれている。
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日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。
アリペイを開発・運営するのは、アリババ傘下の金融スタートアップAnt Financial。このAnt Financialはこのほど、アリペイと顔認証技術を融合させた決済システムを中国・杭州市のケンタッキー・フライド・チキン(KFC)に導入した。
「Smile to Pay」(笑顔決済)と名付けられた、この決済システム。ユーザーが店内の自動販売機で商品を選択すると、その自動販売機に内蔵された3Dカメラが顔を解析認証し、ユーザーとアリペイアカウントとをひも付けて決済を行う仕組みだ。
顔認証技術は、これまでセキュリティの課題が多く実用化が難しいとされてきたが、Ant Financialは3次元で顔認証するアルゴリズムを開発。顔認証の実用化・普及に向けて一歩リードした形となる。
Ant Financialのアルゴリズムは、ユーザー本人が3Dカメラの前にいるかどうかを影などの具合で判断できる。他人がユーザーの写真や動画を使っても認証しないという。2重のセキュリティ対策として、顔認証に加えて電話番号による認証も可能だ。
今回「Smile to Pay」が導入されたのは、KFCの新コンセプトレストラン「K PRO」。これまでのKFCのイメージを覆す、健康を前面に押し出したメニューを提供しており、新しい価値観を持つミレニアル世代やZ世代をターゲットにしている。これらの世代はデジタルネイティブでもあり「Smile to Pay」普及促進のカギとなる層だ。
顔認証技術は、ここ最近実用化されるケースが増えてきている。前述したように、これまでは写真や動画を使ったなりすましが可能だったが、最近は3次元解析を使うことで、写真・動画によるなりすましを防げるようになったことが要因の1つだ。
Appleがこのほど発表した、iPhoneの最新モデル「iPhone X」は、新たに赤外線カメラや顔認証機能が加わったことで話題を呼んだ。「iPhone X」の顔認証も、3次元解析でなりすましを防げるという。
赤外線を使って顔を3次元に解析し、すでに登録されているデータと照合することで認証する。認証精度は非常に高く、暗い場所での認証や、メガネ、帽子、ヒゲ、メイクなども認証可能という。
Ant Financialが、「Smile to Pay」のβ版を公開したのは2年前。それ以来改良を重ね、実用化できるレベルまで精度を高め、セキュリティ面を強化してきた。顔認証という新しいテクノロジーが、巨大市場・中国でどのように受け入れられ進化していくのか。今後の動向に注目したい。
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