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ミライのクルマ――自動運転とコネクテッドカー

「自動運転レベル」の果たす役割とその弊害特集・ミライのクルマ(1/2 ページ)

» 2017年12月01日 15時19分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 目的地を告げるだけで、どこにでも連れて行ってくれる――子供の頃にテレビで見たような“未来のクルマ”を現実にしようと、世界中が自動運転車の開発に動いている。現在、その指標となっているのが「自動運転レベル」と呼ばれるもの。自動化の度合いによって0から5まで6段階のレベルが定義されている(レベル0はシステムが介在しない旧来の自動車のため、実質的に5段階)。

自動運転の「レベル」とは?

 自動運転レベルは米国のNPO、SAE Internationalが提唱した「J3016」と呼ばれる指標がベース。運転に関わる3つのタスク――「操舵と加減速」「走行環境の監視」「システムが動的運転タスクを制御できない場合のフォールバック」をドライバーと車両(システム)のどちらが担うかで分類したものだ。日本でも国土交通省の自動運転戦略本部などがもJ3016に準じた自動運転レベルを活用している。

国土交通省、自動運転戦略本部の資料

 自動運転のレベル1は、操舵と加減速、つまりアクセルとブレーキ、ハンドル操作のいずれか1つをシステムが支援するというもの。近年のクルマが装備している、いわゆる「自動ブレーキ」が有名だが、ほかにも自動車専用道路で前方のクルマに付いて走る「クルーズコントロール」(ACC:Adaptive Cruise Control)、車線をはみ出さない「レーンキープアシスト」(LKAS:Lane Keep Assist System)なども含まれ、市販車でも「先進の安全装備」といった形で普及している。

 レベル2は、レベル1で挙げたシステムを組み合わせて用いるか、高機能化したものを指す。例えば「車線をはみ出さず、前方のクルマについて走る」クルマは、前述のLKASとACCの組み合わせで実現可能だ。さらにレベル2には「遅いクルマがいれば自動的に追い越す」「高速道路の分岐や合流を自動で行う」といった高度な動きも含まれる。日産自動車の「プロパイロット」など市販車でも昨年あたりから一部導入が始まった。

 ただし、レベル2の場合はあくまでもドライバーが監視し、必要な場面では手や足を動かす必要がある「部分自動走行」で、意図的にドライバーを介在させるケースもある。例えばプロパイロットでは先行する車が停止すると自車も自動的に止まるが、先行車が発進してもドライバーがアクセルを踏むか、スイッチを操作するまで動かない。

「東京モーターショー2017」でアウディが量産車としては初のレベル3対応をうたう「A8」を出展して話題になった。さらに同社は2020年までに“完全な自動運転車”を実現すると宣言している

 レベル3になると3つのタスクをすべてシステムが担い、ドライバーはシステムが要請したときのみ対応すればいい。レベル2との大きな違いは、クルマ(システム)が運転の主役になることだ。それだけに自動車メーカーのみならず法整備や社会インフラも歩調を合わせて推進する必要があり、段階的に試験運用などを進めている。

 「高度運転自動化システム」と呼ばれるレベル4では、基本的にすべての運転タスクをシステムが実行する。ただし、交通事情や天候が自動運転に適しているという限定条件付きだ。

 そしてレベル5は「完全運転自動化」といわれ、レベル4のような限定条件はない。どのような環境でもシステムが運転タスクを担い、目的地まで連れて行ってくれる。

 6段階の自動運転レベルは、世界中の企業や行政機関が議論を進める上で一貫した指針を提供したが、実際に自動運転車を開発している自動車メーカーには異論もあるようだ。

 例えばトヨタは、自社の自動運転技術に関する取り組みをまとめた「自動運転白書 トヨタにおける自動運転への取り組み―ビジョン、戦略、開発」の中で、自動運転レベルの分け方に疑問を呈した。「レベル3ではシステムが運転環境の監視について責任を有し、不動作時にドライバーが十分にフォールバックできる時間的猶予を与えることとしているが、これは潜在的にレベル4と同等。実装は容易ではない」「レベル4とレベル5を分ける限定条件は、実際には全てのレベルで勘案されるもの」と指摘する。

 「(J3016は)能力と責任の変化にかかる複数の側面を1つの軸で捉えようとしている。実際にはメーカーやテクノロジー企業は自動運転能力を独立した観点で開発しようとしている」

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