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楽天の通信子会社、民泊向けIoT参入 「次の成長路線の担い手」

» 2018年02月01日 15時21分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 楽天グループの通信会社、楽天コミュニケーションズは2月1日、民泊事業者向けに運用業務を効率化するサービス「あんしんステイIoT」の提供を始めた。テレビ電話を使ってチェックイン時の受付業務を遠隔化したり、旅行者がスマートロックを使って解錠できたりするようにし、運用業務を約3分の1に削減できるという。

photo 旅行者はフロントのタブレット端末を使い、テレビ電話でコールセンターのオペレーターとつながり、チェックインの案内を受ける。民泊事業者側はオペレーターにチェックイン業務を代行してもらえる仕組みだ

 宿泊施設のフロントにタブレット端末を設置。旅行者が顔やパスポートをカメラで撮影・提示したり、画面にサインを記入したりすると、テレビ電話で遠隔のオペレーターにつながり本人確認を受けられる。オペレーターが手元のシステムで予約情報などと照合し、チェックインの手続きをするという仕組みだ。

 オペレーターの確保は、ベンチャー企業SQUEEZE(東京都港区)が担当する。同社は、受付業務などを外注したい宿泊施設と、代行するクラウドワーカーをマッチングするサービス「mister suite」を提供している。これまで培ったノウハウを新サービスに生かし、オペレーターが予約情報などを閲覧するシステム「suitebook」も用意する。

photo 旅行者が見るタブレット端末の画面(中央)と、オペレーターが見る画面(左下)。オペレーターは在宅ワーカーなどが務め、多言語に対応する

 また、部屋の入口ドアにスマートロックを設置。旅行者がパスコードを入力するか、カードキー(Edyカード)を使って解錠できる。宿泊施設内に騒音を検知するセンサーも導入し、音量が高いと運用事業者に通知する仕組みも用意。録音はせず、音量レベルだけを監視するという。スマートロックと騒音検知は、7月から提供する予定。

 両社が事前に行った実証実験によれば、これらのサービスを導入すると、1部屋当たりの運用時間(本人確認、鍵の管理、問い合わせ対応など)を約80分から約27分に削減できたという。今後は楽天会員であれば、チェックイン時の本人確認を省ける仕組みも導入する考えだ。ブロックチェーン技術など最新技術も投入し、各種サービスとの連携も進めていく。

民泊向けIoT事業は「次の成長路線の担い手」

 民泊は、急増する訪日外国人の宿泊ニーズに対応すると期待されている。18年6月には住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、全国で誰でも民泊を営業できるよう“解禁”される。そうした中、楽天コミュニケーションズの平井康文会長(兼社長)は「宿泊施設の運用を代行する事業者の重要性が高まる」と説明する。法律への対応、運用物件数の増加など課題を抱える宿泊施設のオーナーをターゲットに運用代行のニーズを見込む。

 17年に楽天が、住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULL(ライフル)と共同設立した「楽天LIFULL STAY」とのシナジーも構想。楽天LIFULL STAYが開設する、宿泊者と施設を結び付けるプラットフォーム「Vacation Stay」に登録した宿泊施設のオーナーに、あんしんステイIoTを売り込むことも検討する。

 平井会長は「17年度中に数千の部屋への導入を目指す」と意気込む。「楽天コミュニケーションズは通信インフラ事業が中心だが、次の成長路線の担い手を検討してきた。当初は数十あった候補から絞り込み、この民泊向けIoT事業が当社の成長を加速するものと確信している」(平井)

photo 左からSQUEEZEの舘林真一CEO、楽天コミュニケーションズの平井康文会長(兼社長)

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