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ソフトバンク“親子上場”、背景に「群戦略」 孫会長「300年成長する大樹に」

» 2018年02月07日 19時58分 公開
[ITmedia]

 ソフトバンクグループ(SBG)は2月7日、通信事業子会社ソフトバンク(SB)の上場準備を始めたと発表した。SBGが世界規模で投資を進める一方、SBを通信事業分野の中核企業にすることで、それぞれ役割を明確化する狙い。SBGの孫正義会長(兼社長)は、“親子上場”の根底には「群戦略」という20年間描き続けた考えがあると話す。

photo 孫正義会長(兼社長)=2月7日の決算説明会動画より

20年前から思い描いた「群戦略」

 「IT企業には『30年サイクルの限界説』がある」(孫会長)。創業者が高齢化し、テクノロジーのブレークスルーやビジネスモデルの陳腐化などが進むと「世界の圧倒的ナンバーワンになった企業でも黄昏(たそがれ)てきてしまう」。300年間成長する企業、組織モデルを組み立てる解決策として、孫会長が20年前から思い描いていたのが「群戦略」という。

photo 約20年前に「群戦略」について説明する孫会長(当時)

 その正体は「一言でいうと、ナンバーワンの会社の群れ」。SBGは2017年、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立し、英半導体企業ARM Holdings、コワーキングスペース運営の米WeWorkなど、各分野の“トップランナー”に相次いで出資している。しかしナンバーワンの会社を傘下に集めることは「難しい」(孫会長)とも。そのためSBGは、意図的に子会社のブランドを統一せず、コア以外の子会社は持ち株比率を20〜30%に抑えるという戦略を取っているという。

 「(出資交渉時に)ジャック・マー氏(阿里巴巴集団/アリババ会長)に『SBババ』に社名変更してほしいとお願いしても『ノー』といわれただろう。要求しすぎないほうが、ナンバーワンの会社を集めやすい」

 群戦略は「財閥経営」とは「似て非なるグループ戦略」という。「戦前、戦後の財閥は戦う市場がほとんど国内だったが、もはや市場競争は世界を相手にする」と孫会長。そうした財閥は現在、グループ内企業が全て世界ナンバーワンということはなく、「グループだから優先してファミリーカンパニーの(1位ではない)製品を使わなければならない」状況に陥ると指摘する。「強い組織体とは思えない」(孫会長)

 また、専業に集中する戦略の組織体は「30年間でトップに君臨するには正しい戦略だが、300年間、その製品が輝き続けるか、ビジネスモデルが崩れないかという疑問がある」と孫会長は話す。

 そんな群戦略に基づくと「SBGが戦略的持ち株会社になり、オペレーティングカンパニーはそれぞれが独立であるべき」と考えているという。上場後は「配当政策を重視」。オペレーティングカンパニーであるSBで得た利益を配当として、SBGの財務基盤強化、成長の資金に充当していく。「一般株主が加わっても、SBGと同様に受け取れる。お互いの利害が反することにならない」(孫会長)

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 17年度のSBは、上場後の「永続的な成長」を目指し、先行投資のため減益傾向に。大容量データプラン「ウルトラギガモンスター」の提供、スマートフォンとブロードバンドのセット契約割引「おうち割 光セット」の拡販などで「顧客獲得に専念した1年間」(孫会長)だった。今後はそうした顧客基盤を基に「新しいビジネスモデルを積み上げる」という。

 また、ビジョン・ファンドとのシナジーも想定。ファンドが出資した海外ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の非上場ベンチャー)が日本進出を図る際、顧客基盤を有するSBが「受け皿」となって展開をサポートする考えだ。「群戦略で“300年の大樹”となり、多くの果実を収穫し続ける」(孫会長)

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