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コネクテッドカー、「車内で広告流す」で買いやすく?

» 2018年02月22日 16時46分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 ドライバーの約半数が「コネクテッドカー(ネットにつながるクルマ)の購入、利用を検討したい」と考えている――IT調査会社のIDC Japanは2月22日、そんな調査結果を出した。運転の安全性向上に期待が集まる一方、「クルマ購入価格にコストが上乗せされるのでは」と不安視する意見も多い。IDC Japanの敷田康さん(コミュニケーションズリサーチマネージャー)は、スマートフォンと同様、通信機能を持たせたコネクテッドカーの車内で広告動画を流すなど「新しい収益源の創出」を自動車メーカーに提言する。

photo トヨタ自動車が東京モーターショー2017で披露した、最上位車種「クラウン」の新型「CROWN Concept」。2018年夏ごろに発売予定の市販モデルでは、車載通信機を標準装備する

 家庭の所有車を「月に数回以上」運転するドライバーのうち、コネクテッドカーに「興味があり、購入・利用を前向きに検討したい」と答えた人は5.8%、「メリットや価格、リスクを確認しながら購入・利用を検討」が21.6%、「興味はないが、メリット次第では検討」が21.6%という結果だった。敷田さんは「需要の潜在性は高い」と評価する。

 コネクテッドカーに期待する利用目的(複数回答)は「より安全な運転を行うため」(73.6%)、「目的地までより効率の良い移動を行うため」(71.4%)など。コネクテッドカー関連サービスでも「運転時の安全/安心」サポートは、「有償でも契約を検討」が34.2%、「無料であれば利用」が60.8%と、安全性を期待、重視する声が多数上がった。

photo 安全性を期待、重視する声が多数。調査対象は、全回答者のうち「月に数回以上運転する」「コネクテッドカーに興味があり、購入・利用を検討する」と回答した人から500人をランダムで抽出した

 ただ、購入・利用時の不安をみると「クルマ購入価格にコネクテッドカー関連コストが上乗せされる」(65.8%)、「通信料がかかる」(63.4%)、「受けるサービスが増えて契約料金が増える」(58.6%)など、コスト負担への懸念が上位に。ハッキングなどによって「個人情報が漏えいする」(41.4%)、「クルマの安全上に問題が生じる」(36.2%)などを上回った。

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 同様に、事業者としてコネクテッドカーを購入・利用したいユーザーでも、運転の安全性を高めるサービスへの関心が高く、「費用対効果が不明確なこと」を不安視する意見が多いことが分かった。

 調査は2017年11月、Webアンケートで実施。20〜69歳の社会人(個人ユーザー)9421人と、20〜69歳の社会人で企業に勤める正社員、公務員(事業者ユーザー)4804人から回答を得た。

「新しい視点で収益源を創出」を提言

photo IDC Japanの敷田康さん(コミュニケーションズリサーチマネージャー)

 調査結果を踏まえ、IDC Japanの敷田さんは、コネクテッドカー開発に取り組む自動車メーカーに対し「新しい視点で収益源を創出すること」を提言する。例えば、コネクテッドカーの車内で搭乗者が楽しむ動画サービスに広告を組み込む他、AI(人工知能)音声アシスタントとの自然な会話の流れで、商品をレコメンドする――といったシーンを想定しているという。

 また、通信機器などを開発するITベンダーに対しては、(1)収益を期待しやすい「運転時の安全・安心」関連技術を組み込んで付加価値を高める、(2)外部企業にAPIを公開し、サービスプロバイダーの知見、アイデアを取り入れる──など「収益モデルの選択肢を広げる」施策を提案した。

 敷田さんは、コネクテッドカー関連サービスの収益が見込めるのは早くても2020〜21年ごろで、「黒字化には相当な時間がかかる」と予見する。しかし「大手自動車メーカーなどは『外部につながらないクルマは付加価値が下がる』『誰もクルマに乗らなくなる』ということへの危機感があり、赤字覚悟でも“走りながら”考える状況にあるのではないか」とも話した。

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