「あと1〜2年くらいで人間を超えるんじゃないかと思ってます」
こう話すのは、麻雀AIソフト「爆打」の開発者・水上直紀さん(28歳)だ。爆打は、麻雀界でいま最も強いといわれているAIで、440万超ユーザーを抱える国内最大級のオンライン麻雀サイト「天鳳」で七段(2018年2月時点)の実力を持つ強豪プレイヤーだ。天鳳で21個ある段級位のうち、七段は上から数えて5番目で「天鳳全体で上位0.1%を切るレベル」という。一時は九段まで上り詰めた経験もあり、人間と遜色ないどころか、ほとんどのプレイヤーにとっては一枚も二枚も上手の相手だ。
今でこそ驚異の強さを発揮する爆打だが、運の要素も多く、歴史も浅い麻雀AIの開発は試行錯誤と苦労の連続だった。
「約40年の歴史がある将棋コンピュータと違い、麻雀AIの研究は数年前に始まったばかり。ほぼ何もない所から作りました」と話す水上さん。“強い麻雀AI”を作る上でのブレークスルーは何だったのか。麻雀AIの強さの秘密を聞いていくと、「人間が苦手なこと」と「人間だからできること」が見えてきた。
いま話題のAI(人工知能)には何ができて、私たちの生活に一体どのような影響をもたらすのか。AI研究からビジネス活用まで、さまざまな分野の専門家たちにAIを取り巻く現状を聞いていく。
―― 世間的には将棋や囲碁AIが話題ですが、なぜ麻雀AIを作ろうと思ったんですか。
水上さん 初めて麻雀に触れたのは中学生の時で、趣味でたしなむレベルでした。大学でプログラミングの授業があり、麻雀をやったら面白いかなと。
自分の場合は、麻雀の勉強のために強い人に教わりたいという気持ちがあって。自分のプレイを評価してくれるようなものが欲しかったと漠然と思っていました。
―― 自分の先生になるようなAIを。
水上さん しかし、実際にプログラミングを始めると自分で打つよりコンピュータに打たせる方が楽しいと思い始めました。(それは珍しいパターンで)麻雀AIを作る人が少ないのは、ひょっとしたら自分が打つ方が楽しいからじゃないかなと(笑)。
―― 麻雀AIの開発者は少ないんですか。
水上さん ごくわずかですが何人かいます。みんな好き勝手に作っているので共通見解も特になく、参考にできるようなソースコードも少ないです。
―― 本当にゼロからのスタートだったと。何か参考にされたものは。
水上さん 当時一番強かった麻雀ソフト「まったり麻雀」の開発者ブログを全部読みました。あとは、高校時代にとつげき東北さんの著書「科学する麻雀」を読んで、プログラミングを使って麻雀を研究できることを知って。
―― 麻雀は人間でも覚えることがたくさんあって大変です。まず、何から着手したんですか。
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