NHKが開発した「ニュースのヨミ子」さん(以下、ヨミ子)は、3D CGの「人造アナウンサー」だ。音声合成でニュースを読み上げるリポーターとして、ニュース番組「ニュースチェック11」に登場するという。
ヨミ子さんの開発についてNHKの熊田安伸専任部長(報道局ネットワーク報道部)は、「地上波のニュースは必ずしも全ての世代に支持されているわけではない。より広くより多くの方々に番組を知ってもらい、ニュースを広く深く知る機会になれば」と話す。
ヨミ子さんを起用するニュースチェック11は、Twitterで寄せられた視聴者のコメントを画面内で紹介するなど、新しい取り組みを行う実験的な番組でもあるという。
「昔イギリスの番組にマックス・ヘッドルームというバーチャル司会者がいた(※編注:1980年代に音楽番組に登場したキャラクター)。そういうものを目指したら面白いのではないかと考えた」(熊田専任部長)
ヨミ子さんは、競技データから実況内容を自動作成し、音声合成で読み上げる「ロボット実況」の技術を活用して開発。平昌五輪の実況にも使われた技術で、これをニュース読み上げ向けに改良したという。
放送技術研究所の今井篤上級研究員(ヒューマンインターフェース研究部)は「実況とニュースでは発話させる内容が異なるため、それに合わせて機械学習を行っている。声を担当するアナウンサーも別人」と話す。ヨミ子に音声データを提供しているのはある1人の女性アナウンサーで、現時点で名前は非公開だが、ヨミ子のために何十時間も機械学習用のニュース収録を行ったという。
同研究所清山信正上級研究員は「半年ほどの間、連日のように収録して学習させる作業を繰り返した」と振り返る。データの量は「音素でいえば10万ほど」だが、音素以外にも、声の特徴になる「高さ」や「抑揚」などのデータも学習させているという。
しかし、音声合成技術を使ったニュースの読み上げには、既に商用化しているバーチャルアナウンサーなどの技術もある。なぜ機械学習のような膨大なデータを必要とする方法を選んだのか。
「番組からヨミ子開発の話をもらったとき、『NHKらしいアナウンサーを実現したい』という話があり、また(開発したアナウンサーを)『成長させる』ためには、これまで培ってきた機械学習を応用するのがいいのではないかと思った」(清山上級研究員)
今後はニュース以外の会話や動作も機械学習を使って向上させていくという。ニュースチェック11のWebサイトに視聴者からの連絡窓口も設け、届いた改善点や感想などの意見も「ヨミ子」の成長のために利用する予定だ。
熊田専任部長は「今は新人アナウンサーなのでたどたどしいが、日々学習させればさせるほど上達する。気になった点は指摘してもらい、皆さんの手で育てていただくアナウンサーとして提供したい」と話す。
「今はまだAIで発話する『AI』アナウンサーだが、将来的には自由な会話や疑似感情の発露もできるような真の意味での『AIアナウンサー』に成長させたい」(熊田専任部長)
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