KDDIの新社長、高橋誠氏は、4月5日の就任会見で「通信とライフデザインの融合」という言葉を繰り返した。トレンドがモノ消費からコト消費(体験)へと移り変わる中、強みの通信サービスで顧客とつながり、そこからさまざまな体験を提供して顧客を取り込む。一例としてキャッシュレス、AR/VRなどのサービスに注力する考えだ。高橋社長は「われわれは“ワクワク”を提案し続ける会社になりたい」と強調する。
高橋社長が提案する“ワクワク”の1つが「キャッシュレス化」だ。同日からプリペイドカード「au WALLET プリペイドカード」の機能を拡充。残高不足時に銀行口座からチャージする「リアルタイムチャージ」や、電話番号と氏名だけで送金できる「個人間送金」、プリペイドカードから銀行口座へ出金可能な「払出」という機能を追加する。いずれもKDDIと三菱UFJ銀行(旧三菱東京UFJ銀行)が共同出資する「じぶん銀行」の口座と連携させると利用できる。
年度内を目標に、QRコード決済に参入する意向も示した。QRコード決済は、LINE Payが先行する他、競合のNTTドコモも「d払い」を始めている。KDDIは、QRコード決済が可能な加盟店を増やすためにこうした競合との連携も視野に入れているという。「面を広げた上で、自分たちのサービスを拡大できれば」(高橋社長)
「昔、『グッバイ、おサイフ!』という財布を投げるCMを流したところ、『財布を捨てるな!』と怒られたが、その後、中国などでは実際にそうした世界になり、キャッシュ(現金)は見なくなった。日本でもそんな世界が来る」(高橋社長)
時間と空間を超える“ワクワク”体験を届けるため、AR/VRサービスも強化。例えばVRでは、自分の部屋にスタジアムの光景が広がり野球観戦が楽しめる、遠距離恋愛中の彼女とリアルタイムで一緒に食事ができる――など、どんな体験価値を創造できるかを重視する。
運営するECサイト「Wowma!」も、コト消費への移行の中で変革する。高橋社長は「モノを安く売るだけのサイトにするつもりは全くない」と強調。さまざまな体験サービスを作る中で、Wowma!をそこへの入り口にするという発想で取り組んでいく。
この他、優秀なベンチャー企業に出資する「KDDI Open Innovation Fund 3号」をグローバル・ブレイン(東京都渋谷区)と共同で設立。5年間で約200億円を投資予定で、AIやIoT、ビッグデータなどの取り組みを強化するという。
さらに、2018年夏にはビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」(東京・虎ノ門)を設立。ワークショップスペースや、製品やサービスのプロトタイプを作れるスペースを用意し、パートナー企業とのサービス開発を進めていく。
高橋社長は「5G、IoT、AIなどが登場する大変革時代に、全力で取り組んでいきたい。そうした最新技術をお客さまの体験価値にどう変換するかが、われわれの勝負所と思っている」と意気込んでいる。
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