一方でオンキヨーは、振動を利用して音を出す「加振器」を家の中の壁面などに取り付け、スピーカーのように音を発生させる技術を長年に渡って研究・開発してきた。既にバスルームや洗面所に設置して居住空間をスピーカーに変えるという提案をBtoB向けに始めている。
バスルーム向けの加振器オーディオシステムとして商品化した“Vibtone(ビブトーン)”シリーズは、大和ハウスや積水ハウスなど住宅メーカーとパートナーシップを組み、リッチなバスタイムを楽しみたい音楽ファンに魅力を訴求するアイテムだ。バスルームの壁や天井に防水性のスピーカーを埋め込んだり、あるいは防水対応のBluetoothスピーカーを持ち込む手もあるだろうが、加振器を使うことでスピーカーの劣化を防いだり、バスルームの美観をキープできるのがこの商品のメリットになる。
音楽ソースは洗面所に置いたスマホやタブレットからBluetoothで飛ばしたり、同じく洗面所に設置したシステムのコントロール部にアナログ音声ケーブルでつないで聞くスタイルが提案されているが、オンキヨーの八木氏によると「浴室にマイクを一緒に埋め込んで、インターネットにつなげばクラウドAIを使って操作することも可能になる」という。この考え方を発展させていくと、家のいたるところに加振器とマイクを設置してクラウドのAIに接続すれば、家のどこからでもAIアシスタントが呼び出せる。つまり、「まるごとスマートスピーカーのような家」も夢ではない。
4月に国内で開催されたAI・人工知能関連の展示会に出展したオンキヨーは、会場でビブトーンの加振器を壁に貼ったポスターのパネルに埋め込んだコンセプトを披露した。パネルには加振器のほかに、スマートスピーカー「VC-GX30」にも搭載する、エンクロージャーから筐体を分離させたフローティング構造のマイクを組みこんだ。これによって精度の高い音声コマンド入力が可能になる。
加振器を使うと色んなものが音の鳴るスピーカーに変わる。例えばタイガー魔法瓶の炊飯器は、天面にオンキヨーの加振器を搭載した製品だ。料理をするときなど、濡れた手で炊飯器の天面を触れることも多いので、開口部を持たないスピーカーを実現できる加振器の技術が役に立つ。加振器はまたボタンを押したことを触感で伝えるインタフェースとしても機能する。
近年になってAIとエレクトロニクス機器の関係が急接近しつつある。多くの人々が豊かな暮らしを感じられるスマートホームを実現するため、オンキヨーが試行錯誤を続けているAIの取り組みは、一歩ずつ着実に前進しているようだ。
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