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過熱する“AI人材争奪戦” 「報酬以外の魅力必要」 DeNAの戦略(2/2 ページ)

» 2018年05月08日 06時00分 公開
[村上万純ITmedia]
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モバイルゲーム開発にもAI活用の時代

 同社は2010年にデータ分析組織を立ち上げ、今のAIシステム部は約50人の体制。当時は機械学習を使わないビッグデータの分析などを行ってきた。09年に携帯電話向けプラットフォームMobage向けに提供したゲーム「怪盗ロワイヤル」が大ヒットし、プレイヤーの日々の行動ログを分析し、どうすれば長く遊んでもらえるかを試行錯誤した。おすすめゲームや友達、ニュース、広告などのレコメンドにデータ分析の手法を用い、一部機械学習も活用したという。

山田部長 山田部長

 「15年ごろまでは機械学習の利用は全体の2割くらいだったが、ここ数年でディープラーニングが世の中に与えた影響が大きく、一気にAI活用が進んだ」(山田部長)

 今はスマホ向け盤上ゲーム「逆転オセロニア」の開発にディープラーニングと強化学習を活用。AI研究者とKaggle「master」(Kaggle内の称号)のエンジニアが中心となり、AIエージェント同士を対戦させることで知見を蓄積している。

 山田部長は「他社もモバイルゲームのデータ分析などをしているが、より踏み込んで機械学習まで広く取り入れている所は少ないのでは」とし、「オセロニアの場合は、ゲームの中に立ち入って、どのコマをどのタイミングで取ったか、デッキの中身、対戦相手などプレイヤーの細かいログを見ている」と話す。

 しかし、優秀な人材の獲得はどうしても価格競争になりがちだ。実際、大手IT企業はこぞって高額な報酬を提示して優秀なエンジニアを採用しようとしている。サイバーエージェントも1月に、新卒入社するエンジニアを対象に、初任給制度を廃止し、「能力給」を採用すると発表した。

 山田部長は「高額な報酬だけでなく、魅力的な環境作りも大切」と強調する。

AI人材にとっての魅力的な環境とは

 「研究だけやりたい人にとって、ディー・エヌ・エーはそんなに魅力的な場所じゃない」と山田部長は笑う。ゲーム、オートモーティブ、ヘルスケア、漫画アプリ、ライブ配信サービス、スポーツなど、さまざまな事業の問題に取り組め、実際に消費者が触れるサービスに関われるのが特徴で、「もともとビジネス分野に強い人材がいるので、社内のKaggle的な問題に集中でき、コンピューティングリソースも潤沢だ」と続ける。

 ただし、多様なサービスや潤沢なリソースなどは競合他社も同様の環境を用意できるため、今後は社内に「Kagglerが活躍できる制度を整え、成功事例を増やしていきたい」としている。同社は12月までに10人のKagglerチームを作る考えだ。

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