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「ICO実施しない」“オタク業界”向け仮想通貨「オタクコイン」の新構想とは

» 2018年05月09日 20時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 「議論の末、ICO(Initial Coin Offering、新規コイン発行)は実施しないことにした」――オタク系のコンテンツ業界に特化した仮想通貨「オタクコイン」を企画するオタクコイン準備委員会は5月9日、オタクコインの配布についてICO方式の販売はせず、世界中の対象者へ無償で付与する考えを示した。

「ICOは実施しない」と掲げるオタクコイン準備委員会
Tokyo Otaku Modeの小高奈皇光(なおみつ)CEO

 オタクコインは、日本のオタク文化を海外向けに発信するメディア事業やEC事業などを展開するTokyo Otaku Modeが17年12月に発表した構想。当初は「18年夏ごろのICOの実施に向けて検討を行っている」としていたが、Tokyo Otaku Modeの小高奈皇光(なおみつ)CEOは、「弊社は12年からスタートアップとして起業しているため、ICOで一から資金を調達する必要はない。われわれのビジネスをベースとしながら、オタクコインは無償配布することにした」と考えを改めたという。

 現在の構想段階では、仮想通貨「イーサリアム」のブロックチェーン上のトークン規格「ERC20」のトークンとして総数1000億枚のオタクコインを発行し、その一部を「AirDrop」や「Bounty Program」という方式で、オタクコイン専用のウォレットアプリユーザーへ配布する。コインの価値は当初は「レートは未定」としながらも固定相場制とし、Tokyo Otaku Modeや参画パートナーのECサイトの決済に利用できるようにする。

 通貨としての価値の他、オタクコインを保持することで定期的に「投票」できる権利も持てるとしている。投票権はコインの保持数量に応じた量が発生し、投票してもコインは失われない。

1オタクコインにつき1票の投票権を得る

 投票できる先は、オタクコインのプラットフォーム上で公募するアニメや漫画、ゲームの新プロジェクト。得票が多かったプロジェクトに対しては、事務局がオタクコインを提供するなどして支援するという。

投票を多く集めたプロジェクトに対し、事務局が支援する

 仮想通貨取引所への上場も視野に入れる。上場となれば市場の売買で通貨の価値が変動するため、価格の固定をやめて市場に任せる考えだ。上場までは固定相場で決済を受け入れるため、「Tokyo Otaku Modeが月に数百〜数千万円の支払いを負担することになるだろう」と小高CEO。

 ロードマップでは、18年夏〜秋以降に「オタクコイン財団(仮称)」を設立した後、オタクコインの無償配布を開始。19年には、まずは公募ではなく、参画パートナーなどからモデルケースとなるプロジェクトを創出し、投票を開始するとしている。

ロードマップ。コインの無償配布は18年夏〜秋以降を予定

 オタクコインの発行枚数のうち39%をオタクコイン財団が所有し、運営費などに当てるとする一方、投票の意思決定には介在せず、プロジェクトへの資金提供に際しても手数料を取ることはないとしている。

 オタクコインで投票プラットフォームを作る理由について、準備委員会は「現在の消費モデルやクラウドファンディングの仕組みではできていない、オタクコミュニティー全体の支援につながる投票制度を採用した」とコンセプトペーパーに記している。

 本当に支援すべきプロジェクトなのかを世界中のみんなで一緒に議論し投票することで、オタク文化がより盛り上がっていく――そんな期待がオタクコインには込められている。

「文化の寿命・熱量は世界中の人がその文化について考え語り合った量に比例する」

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