米Uberの日本法人、Uber Japan(東京都渋谷区)が5月17日、官報に掲載した第6期決算公告(2017年12月31日現在)によれば、純利益は3000万円(前年同期は1500万円の赤字)、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は7600万円(同4500万円)だった。
Uber Japanは米Uberの日本法人として、12年に設立。本来、配車サービス「Uber」の特徴は、一般的なタクシーの配車のみにとどまらず、一般人が自家用車と空き時間を利用して他人を運ぶライドシェアを提供している点にあるが、日本国内では14年に開始したタクシーとハイヤーの配車のみとなっている。一方、16年には配車サービスのノウハウを生かした出前サービス「UberEATS」を開始。こちらは都内を中心に1000店舗以上に拡大している。
今回の決算では、黒字化を果たしたUber Japan。一方、09年創業の米Uberは、世界70カ国400都市以上にまで拡大、1日の利用回数は延べ1000万回以上、企業価値は未上場ながら7兆円を超えています。Uber Japanの黒字化自体は悪くないのですが、米Uberの日本展開としては、満足できる数字とはいえなさそうです。
その理由はというと、最大の特徴であるライドシェアサービスが、日本では“白タク”行為として認められていない点に尽きそうです(一部を除く)。現在ではUberEATSしかり、さまざまな方面に事業展開しているUberですが、本来の配車サービスがここまで世界中で急速に普及したのは「使い勝手の良さ」「料金支払いの明確さ簡単さ」「運転手と利用客、双方の信用評価」「運転手の取り分が80%」といったメリットや仕組みが、利用者、運転手の双方に評価されたからといえます。
ただし、そうした躍進の前提条件として、海外の場合、タクシーが結構な割合で「領収書を発行しない」「ぼったくる」「愛想が悪い」「つかまらない」といった問題点を抱えているためです。それらのレベルと比べれば、日本国内のタクシー産業は比較的高品質、かつ斜陽産業になりつつあり、業界の猛反発を抑えてまで、リスクを取って規制緩和を進めるべきなのか――というと、確かにもろ手を挙げて進めづらいかもしれません。
そして、遅々として進まない日本の規制緩和の状況を受け、米Uber本社は17年末に「アジア諸国同様、日本でもタクシー事業者と提携したサービスに当面専念する」という旨の方針を発表。日本法人の高橋正巳社長は退任となりました。そうなってくると、既に400万ダウンロードを達成した「全国タクシー」などもある中、どのようにメリットを打ち出したり、イニシアチブを取っていくのか、ちょっと爆発的な成長はイメージしづらいところですね。
一方、3月には自動運転車による初の歩行者死亡事故が起きたものの、5月には「2020年には空飛ぶタクシーのトライアルを開始する」と発表するなど、相変わらずアグレッシブに時代を進めようとするUber。当分の間、日本国内との温度差は良くも悪くも開いていくことになりそうです。
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《著者紹介》
平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。
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