東芝は5月23日、標準的な通信用光ファイバーを使い、量子暗号通信の通信距離を世界最長となる500キロ以上に拡大する新方式「ツインフィールドQKD(Quantum Key Distribution)」を、傘下の英ケンブリッジ研究所が開発したと発表した。2019年中に有効性を実証することを目指し、研究開発を進める。技術の詳細は、2日発行の「Nature」に掲載された。
量子暗号通信は、秘匿性の高い情報を配信する際、暗号鍵の配信に用いられるセキュリティ技術。暗号鍵を光ファイバー上の単一光子の状態にして符号化・送信し、光子を読み取ろうとすると状態が変わるため、確実に盗聴を検知できる。ただ、通信距離が長くなると、情報を伝達する光子が散乱などで失われてしまうため、これまで、光ファイバーを用いた量子暗号通信は、200〜300キロの距離に限られていた。
今回、鍵伝送距離の長距離化と、配信速度を高める手法を考案。従来の量子暗号通信では単一光子がファイバーの一端からもう片方の端まで送られるが、新技術では、光のパルスがファイバーの両端から中間点に向けて送られ、中間点で光子を検出。その結果を利用して、両端で暗号鍵を共有する。
これにより、世界で初めて、500キロ以上の量子暗号通信を可能にしたとし、例えば、ロンドンとパリ、ブリュッセル、アムステルダム、ダブリンなどの都市間を結ぶ光ファイバー網上で、秘匿性の高いデータの安全なやり取りが可能になるという。鍵配信速度も、従来の到達限界距離で、100ビット/秒を達成したとしている。
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