「これまでとほぼ変わらない。独立性を重視する」――米Microsoftが米GitHubを買収することについて、GitHubのジェイソン・ワーナーさん(シニアバイス・プレジデント)はそのように強調した。「統合の魅力は、Microsoftが抱える11万人の開発者から知見、ノウハウを学べること」とも説明した。
GitHubは、ソフトウェア開発者がソースコードを共有できるWebサービスとして、2008年4月に正式に提供を始めた。18年6月現在、世界で約2800万人の開発者が利用するサービスに成長した。開発者がGitHub上で作成したリポジトリは8500万超。同社の公家尊裕さん(カントリー・マネジャー・ジャパン)は「10年間でGitHub上で革新的なプロジェクトが多く生まれ、世に送り出された」と胸を張る。
GitHubは「2015年、大きな決断をした」(公家さん)。米国以外の拠点として東京にオフィスを構え、日本語でのテクニカルサポートなどを充実、日本国内でのニーズ拡大にも努めてきた。公家さんによれば、15年と比べると日本のユーザー数は250%増えたという。
ワーナーさんは「開発者は、世界中で最も求められるスペシャリストになった。彼らが書くコードは、地球上の原動力になっている」という。ただ、開発者にとって「学びは終わらない」。日々、新しいツールやプログラミング言語などが登場し、開発者が追い付くのは簡単ではないと、ワーナーさんは指摘する。
「ソフトウェアのコード自体も複雑化する中、開発者が望むような、コーディングをしやすい環境作りにシンプルにフォーカスし、迅速にコードをリリースできるお手伝いをしていく」(ワーナーさん)
これまでも同社は「複雑な問題を開発者が皆で解決できるように、シンプルなソリューションを提供してきた」という。例えば、開発者のローカルリポジトリでの変更を他の開発者に通知し、コードレビューを促す「プルリクエスト」は、GitHubが最初に取り入れた。「いままでのGitHubであり続けるとともに、Microsoftとの統合でサービスを加速する推進力を得る」
統合により、Microsoftの開発者のノウハウを取り込む。「Microsoftにはスマートな開発者がそろっている。Microsoftはクラウドサービスも展開しており、それらを支えるインフラの開発者から学べることは多い」(ワーナーさん)
Microsoft傘下となっても、独立した運営を続ける方針だ。日本マイクロソフトの榊原彰CTO(最高技術責任者)は「Microsoftは、創業当時から開発者と歩んできた。GitHubは、開発者がより多くのことをできるようにする『デベロッパーの家』。価値観をともにするGitHubと、開発者を支援する道を選んだ」と話す。そのために「(Microsoft製のものに限らず)全てのデバイス、クラウドサービス、OSをサポートする」という。
「LinkedInや『Minecraft』開発元のMojangを買収したときも、彼らの独立性を保ってきた。今回もそのように行動で示す。開発者が今まで通り、GitHubの機能を自由に使い、安心してソースコードを蓄えられるようにすることが、Microsoftのミッションだ」(榊原さん)
一方、GitHubは3月、DDoS攻撃を受け、一時アクセス不能になるトラブルが発生した。ワーナーさんは「過去最大級の攻撃だったが、誇りに思うのは、使えなくなったサービスは全体の一部分で、数分で復旧したことだ」と話す。
「今後、同様の攻撃がいつ起こるかは予見できないが、障害から復旧する仕組みが優れたインフラを整えており、リカバリーは可能と信じている」(ワーナーさん)。プロバイダーとの連携の他、Microsoftと共同で対策を考えられる部分もあるとしている。
「世界最大規模のソースコードを有しているプラットフォームとして、こうした攻撃に対処していく責任があると思っている」(ワーナーさん)
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