フルタイムシステムは、現在でも新築マンションへの導入で73.4%(2017年、建築情報ベース)と高いシェアを誇る。その理由について原氏は、コールセンターによる集中管理に加え、入居者と部屋番号をひも付けた「登録情報」を挙げる。宅配ボックスの自動化を進める上で大いに役立ったという。
「例えば、荷物が放置されているとボックスが一杯になって動きません。当初はセンターから入居者に対して電話やFAX、はがきで連絡していましたが、99年にeメールで知らせるサービスを始めるなど、着荷や滞留といった宅配ボックスから上がってくるデータで管理の自動化を進めました。登録情報がなければできません」(原氏)
近年ではオートロックやインターフォンのメーカーなどとも協力し、入居者が帰宅すると玄関のインターフォンで荷物が届いていることを知らせたり、Webサイトを通じて荷物の数を確認できたりと幅広い情報連携が可能だ。こうした協業がスムーズに進んだのも、同社が入居者の登録情報を持っていたから。コールセンターで一元管理し、入居者にクローズドなサービスを提供するベースになった。
例えば「F-ics」というICチップは、オートロックや宅配ボックスを開ける共通の鍵として利用できるほか、子どもに持たせれば帰宅時に親のスマホにメールが届く。着荷を知らせるメールが、子どもの見守りサービスにまで発展したことになる。
宅配ボックスを活用したシェアリングサービスにも力を入れている。サイクルシェアリングでは、電動アシスト付き自転車のバッテリーを宅配ボックスに保管することで貸し借りを無人化。他にも提携した食材宅配会社やネットスーパーからの留め置きサービス(冷蔵ロッカーもあり)、クリーニングに出す衣料品の発送、レンタカーの鍵受け渡しなどサービスの幅を拡大している。
中でもシェアサイクルは、自転車置き場の省スペース化や放置自転車対策としても有効。災害発生時にはバッテリーを非常用電源として使えるなど利便性が高く、「今では(新築マンションの)約半数が導入しています」という。
もちろんシェアサイクルを設置するには宅配ボックス以外の場所にスペースが必要だ。マンションデベロッパーやサービス提供会社と物件の企画段階から一緒に進めなければならないため、自ずと彼らとの関係性にも変化が出てきたという。
「われわれにとっては入居者だけでなくデベロッパーもお客さんです。以前はデベロッパーに対して『宅配ボックスを導入しませんか』と営業していましたが、今はマンションの販促に使えるキーワードをたくさん持っています。もう一緒に“街作り”をする時代です」(原氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR