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» 2018年08月26日 08時00分 公開

体当たりッ!スマート家電事始め:ステレオ仕様の異端児 パナソニックのスマートスピーカー「SC-GA10」開発秘話 (2/3)

[山本敦,ITmedia]

Googleとのコラボは開発の初期段階にスタートした

 桑原氏はSC-GA10の開発が始まった2016年当初、「実はAIアシスタントを搭載するスマートスピーカーになる予定はなかった」と打ち明ける。

SC-GA10の商品企画を担当したパナソニック アプライアンス社 ホームエンターテインメント事業部 オーディオ・ネットワークビジネスユニット 商品企画部オーディオ・ネットワーク商品企画課 オーディオ一係 係長の桑原広次氏

 「開発が立ち上がった当時は、市場に様々な音楽サービスと音楽リスニング用のモバイルアプリが乱立し始め、ユーザーを混乱させているような状況でした。一方では多彩な音楽配信サービスをビルトインしたネットワークオーディオ・コンポーネントが世界的に注目され始めた頃、パナソニックも多様なサービスに対応する製品の検討をしていたのですが、ちょうどGoogleからマルチメディアプレーヤーの『Chromecast』のオーディオサービスに対する新しい取り組みについて説明を受ける機会がありました」

 Googleは、2015年にネットワーク機能を搭載しないオーディオ・コンポーネントを“スマート化”して音楽配信サービスが楽しめるようになる外付けアダプター「Chromecast Audio」を米国で発売し、翌16年春には日本市場にも投入した。グーグルのChromecastシリーズが映像だけでなく音楽系の配信サービスにも手を伸ばす過程の中、オーディオのエキスパートと手を組んで足場を固めようとする戦略が、当時のパナソニックが描いていた次世代のネットワークオーディオ・コンポーネントの構想とクロスした。そしてAIや音声操作の搭載へと発展していったのだ。

 「GoogleはChromecastによるエンターテインメントに、当時スマートフォンのユーザーインタフェースとして普及していたボイスアシスタント『Google Now』の音声コントロールを組み合わせるユーザー体験を模索していました。これがちょうどパナソニックも検討を進めていた、音声操作による次世代のネットワークオーディオ製品の世界観にぴたりと合致するものでした。こうしてGoogleと正式にパートナーシップを組んだことにより、当社が開発を計画していたSC-GA10の原型となるネットワークオーディオ製品に最先端のAIアシスタントと音声操作によるインタフェースを搭載するための挑戦がスタートしました」

 当時はAmazonもAIアシスタント「Alexa」や音声インタフェースによるサービスを北米で開始していたが、「オーディオ的な観点で優れていた」という理由により、パナソニックはGoogleのサービスを採用することを決断した。

NASやDIGAに保存した音源も再生できる「サウンドジャンプリンク」

 17年秋にGoogle Homeが鳴り物入りで日本に登場し、その後もいくつかのブランドからGoogleアシスタントを搭載するスマートスピーカーが商品化された。今はそのブームが一段落した感もある。パナソニックのSC-GA10は先行商品に比べるとタイミング的には少し遅れて発売されたモデルだが、音質をはじめとする特徴はしっかりとアピールできているのだろうか。桑原氏に聞いた。

 「一気に売れるタイプの商品ではないことは想定していますが、発売後の反響は予想以上に大きなものでした。音質は本機の良き差別化要素になっていると実感しています。Works with Google AssistantやChromecast built-inの機能に対応し、Googleのスマートスピーカーからホームネットワークを介してコントロールできるミニコンポ『SC-HC2000』を含め、音質だけでなくパナソニック独自の便利なネットワーク再生の機能である『サウンドジャンプリンク』に対応したところなど、引き続き興味を持っていただける皆様に伝えていきたいと考えています」

サウンドジャンプリンクを含むSC-GA10による音楽再生に関わる機能は「Panasonic Music Control」アプリで行う仕様とした

 サウンドジャンプリンクとは、パナソニックのモバイルアプリ「Panasonic Music Control」を使い、ホームネットワーク内のNASや、パナソニックのBlu-ray Discレコーダー「DIGA」などDLNAサーバから音楽ファイルをストリーミング再生する機能だ。Googleアシスタントを搭載したスマートスピーカーには、SC-GA10の他にNASなどミュージックサーバとの連携やGoogle Home以外の独自アプリに対応する製品は今のところ存在していない。パナソニックがユニークな機能を同社初のスマートスピーカーに搭載できた背景はどこにあるのだろうか。

サウンドジャンプリンクを使ってディーガに保存したCDの音源を再生する時のアプリのイメージ。SC-GA10でDIGAを選択、フォルダから楽曲をタップする

 「パナソニックが過去に手がけてきたDLNAホームサーバ機能や、ハイレゾ音源をワイヤレスで伝送できるAllPlay規格に対応した製品のノウハウを生かすことができました。SC-GA10は開発の初期段階からネットワークサーバと連動する機能にかなりのこだわりを持ちながら仕様を決め、Googleと議論を交わしてきました。その成果が完成したスピーカーに現れていると思います」

 当初は本体の設定から音楽再生の操作までパナソニックのアプリだけで行う構想もあったそうだが、最終的にはGoogleの製品とサービスによるワンストップの体験をスムーズに実現するため、初期設定はGoogle Homeアプリで行い、サウンドジャンプリンクを含む音楽再生に関わる機能は「Panasonic Music Control」アプリで操作を行う仕様とした。最終的に“アプリが2本立て”のような形に収まることになってしまったが、「そこはパナソニックの独自アプリの使いやすさによってカバーができます。特長としてアピールしていくことが大事」と桑原氏は前向きだ。

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