「AI(人工知能)は触ったことないし、プログラムも書けません。でも社長が“AIをやれ”って言うので何とかしてください」――こんな困ったオジサンたちを、ユーモアたっぷりの愛と皮肉で表現する人物をご存じでしょうか。
その名は「マスクド・アナライズ」さん。正体は一切不明でソーシャル上のアイコンは覆面マスクと、一見イロモノ系アカウントに見えますが、Twitterでの発言は多くの人たちから「あるある」「共感する」と絶賛され、ときには何千回、何万回とRTやいいねされています。
それもそのはず。普段の仕事では「AIを作ってほしいという相談から、導入後の改善まで請け負い、お客さまに合わせてAI開発、データ分析、IoT導入と結構幅広くやっている」とのこと。発言に信ぴょう性や具体性があって当然です。
冒頭のようなむちゃぶりをしてくるオジサンに向けて、痛いところを突いて地味にダメージを与えるような発言を続けるマスクドさん。「各方面からいろいろ言われますけど」と笑う一方で、言わなきゃいけないことを誰かが言わないといけないという使命感も持っているそうです。
そんなマスクドさんに、現場の最前線に立ち続けるからこそ分かるAI開発現場のリアルな現状をざっくばらんに語っていただきました。その覆面を通し、AI開発の今をどのように見ているのでしょうか。
(編集:ITmedia村上)
今ではさまざまな企業がAIをビジネスに活用しようと動いていますが、AIブームはまだ過熱しているのでしょうか。
「AIブームは一時期すごく過熱しましたが、2018年の春ぐらいには落ち着きました。会社で突然偉い人からAI導入を指示されたものの、何をどう取り組めばいいのか分からず、途方に暮れる担当者が弊社のようなAIベンチャーに電話してあれこれ相談してくることを、私は「いきなり!AI」と呼んでいます。そういう「いきなり!AI」は減ってきて、ある程度AIについて分かっている人や、既にAI導入に取り組んでいる人からの相談が増えています」(マスクドさん)
そう語るマスクドさんは、5年ほど前からAI開発に携わっているそうです。当時、ディープラーニングを研究する東京大学・松尾豊さんの著書「人工知能は人間を超えるか」が大きな話題となり、AIブームが勃興していました。
ところが、当時から大忙しというわけではなかったそうです。
「13年ごろのAIは、自社でビッグデータを持つ大企業だけのものでした。16年〜17年ぐらいからブームが過熱し始め、業種・規模問わず“いきなり!AI”だらけになっていきます。恐らく大手のSIer(※)なら見積もりで数億円になってしまうから、小さいベンチャーなら安上がりと思って連絡しているのでは? って感じの人たちが非常に多かった。深くは突っ込みませんけど」と、マスクドさんは当時の苦い思い出を振り返ります。
※SIer…システムインテグレーションを行う業者。情報システム構築の際、企画・設計から開発、運用サポートなどを一括で請け負う
では、なぜ「いきなり!AI」は減ってきたのでしょうか。
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