「僕も同業他社の動向が気になるのでチェックするんですけど、本当に自社でやってるのか? と疑いたくなる会社が多い。しかし、見極めるのは難しい。外注する立場になって、ちゃんとAIを作れる企業に頼みたいと思ったとしても、正直どこを見れば良いか分からないです。もう、ほとんど運任せの状態になってます」
結局、地道だけど人材の育成に取り組むしかないというのがマスクドさんの結論です。このような、AI開発の外注がほとんど運任せになっている様子を、ソーシャルゲームの「ガチャ」に例えたnote「社会人のための「AIガチャ」入門」は、ソーシャル上でかなり話題になりました。
既にデータサイエンティストの育成が始まっている会社であれば問題ないでしょうが、ゼロから始めるベンチャー企業は「相当辛い」。なぜなら、データサイエンスについて正しく評価できる人も評価する方法もないからです。「中小企業だとデータや予算が限られるので、すぐ行き詰まってしまう」のが現実のようです。
AI開発をめぐる「残念な状況」は、なぜ起こるのでしょうか。少し歴史をさかのぼると、ビッグデータ、DMP(※)、ERP(※)など、「全ての問題を解決する魔法の機械と、うまくいかないシステム導入」という歴史は常に繰り返されてきました。
※DMP…Data Management Platformの略。企業が持つ顧客データやマーケティングデータなどを統合的に管理し、マーケティング活動全体を最適化するためのプラットフォーム
※ERP…Enterprise Resources Planningの略。日本語では、「統合基幹業務システム」や「統合業務パッケージ」などと呼ばれている
マスクドさんは「システムに人が合わせるのか、あるいは人の業務にシステムを合わせるか。そうした考え方の違いなんです」と主張します。
「システムがパッケージ化されていても、業務フローに合わせてカスタマイズしたいという声は根強くあります。しかし、それには限度がありますし、何億円も追加投資しないといけない。AIも同じで、人がやっていた作業をAIで再現したいという依頼はどこかで無理が生じる。人に合わせてシステムを開発しようとすると、残念な結果になってしまうんです」
なぜ「人に合わせたシステム開発」が横行するのでしょうか? 本来は仕事のプロセス自体をAIで置き換える必要があるはずですが、実際は「現場の業務知識が欠落した状態でAI導入を進めないといけない」現状があるようです。
製造業の例を見てみましょう。
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