通信会社やメーカーなど56の企業と団体が参加する「802.11ah推進協議会」が11月7日に発足した。IoT向けの新しいIEEE標準規格である802.11ah(Wi-Fi HaLow)の国内利用を目指し、各種トライアルや関係機関への働きかけを行う。会長に就任した小林忠男氏(無線LANビジネス推進連絡会顧問)は、「(LPWAと同じ)920MHz帯で802.11ahを利用できるようになれば、先行するLPWAが抱えている課題の大半を解決できる」という。
802.11ahは、「従来の802.11acを10分の1にクロックダウンした仕様がベース」(酒井大雅運営委員)通信規格だ。通信速度を下げる代わりに伝送距離を10倍に延ばし、スリープモードなど消費電力を抑える仕様を盛り込んだ。規格上、16MHzの帯域幅を使った場合でスループットは347Mbps(理論物理速度)。実用上は4MHz幅で5Mbps程度と「うまくいけば数Mbps程度のスループットを出せる可能性がある」(酒井氏)
会見で披露した模擬実験では、さらに狭い1MHz幅とし、減衰器を使って1キロメートル離れた場所を再現。平均1.5MbpsのVGA(640×480ピクセル)動画を再生してみせた。
「遠くまで届くWi-Fi」を生かす、さまざまなユースケースが検討されている。例えば工場や学校では、センサーからの情報取得に加えて監視カメラの映像を伝送できるため、「パイピングに異常が発生した場合でも、カメラの映像で様子を確認し、対策を講じて現場に行ける」。災害発生時には少数の基地局車を派遣するだけで広いエリアに情報インフラを提供。IoT家電では情報の取得に加えてファームウェアのアップデートも行えるという。「家電のセキュリティ向上に役立つ」(酒井氏)
小林会長は、先行するLPWAに対する802.11ahのアドバンテージとして「Wi-Fiベースのため、ユーザーが自由にネットワークを構築できる」点を挙げた。「LPWAは商用化を考えるフェーズに来て、デバイスごとに契約や回線料金をかけるのか、と考えたり悩んだりする段階に入った。利用するメリットとコストのバランスという根源的な問題を抱えている」という。「802.11ahが、これまでのWi-Fiと同様に使える意味は大きい。インダストリーやホームのIoT領域で多様なサービスが提供されることを期待している」(小林氏)
協議会では今後、実験局の免許を取得して各種トライアルを実施しながらユースケースや課題、条件などの検討を進める。同時に日本でも920MHzを利用できるように総務省や関連団体に働きかけていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR