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「プレステクラシック」のエミュ採用で思い出した20年前の出来事

» 2018年12月03日 17時19分 公開
[松尾公也ITmedia]

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が12月3日に発売した小型プレステ「プレイステーション クラシック」には、オープンソースのプレイステーションエミュレータである「PCSX ReARMed」が採用されていることが分かった。設定>法的表示>オープンソースソフトウェアに掲載されている。

 PCSX ReARMedは2000年から開発されているPCSX Reloadedからフォークされており、Armプロセッサに最適化されている。コア部分はGPLv2ライセンスだ。

photo プレステクラシックにはオープンソースソフトウェアのPSエミュレータが使われている
photo この奥にArmチップが載っているはず

 12月3日に数量限定で発売されたプレイステーション クラシックには「鉄拳3」「ファイナルファンタジーVII インターナショナル」など20タイトルが収録されている。USB接続のコントローラは2台付属。対戦プレイもできる。

photo 鉄拳3
photo ファイナルファンタジーVII インターナショナル

 この件については、SIEの前身であるSCEIが米ソフトウェア会社Connectixが1999年に発売したプレイステーションのMac用エミュレータ「Virtual Game Station」を訴え、敗訴した後に買収して解決した件を思い出す。

 20年近く前、1999年2月16日に筆者がメールマガジン「MacWIRE」向けに書いた記事を全文掲載しよう。時代は変わったのだ。

  • ConnectixのCEOがプレステエミュレータを語る

 (1999年)2月15日朝,ConnectixのCEOであるRoy K. McDonalds氏は,日本のプレスと電話によるプレスカンファレンスを行い,Sony Computer Entertainment (SCEI) のPlayStationをPower Macintosh G3上でエミュレートする,Connectix Virtual Game Station (CVGS) に関する現状報告を行った。

 CVGS 1.0は,1月5日から,MACWORLD Expo/San Franciscoの会場で約3,000本を販売したが,1月27日リリースされた1.1も好調な滑り出しを見せている。こちらは,Connectixのショッピングサイトからのオンライン購入が可能で,すでに2,000本を売っている。流通チャネルでは,毎週100万ドル以上の注文が入っているという。

 Connectixでは,米国以外の国際市場における需要を調査中だ。日本市場における販売については,「最高品質の製品のみの提供を心がけている。そのための事業計画を立案中だ」とMcDonalds氏は語っている。ポイントは,SCEIとの係争ではなく,国内タイトルとの互換性向上にあるのだという。Connectixの国内販売代理店であるシステムソフトでも「RAM Doubler以来のヒット商品になる」と国内販売に意欲的であり,SCEIの提訴で潰えるかにみえた日本語版登場の可能性もありそうだ。

 ソニーとの裁判は,現在,Discovery Processという段階にあり,事実関係を明らかにするために,裁判所が両社に対して細かい質問を行っている最中で,公聴会が3月末に開かれるという。ただ,裁判の行方については自信を持っており,「CVGSのマーケティングおよび開発は合法的に続けていくことができると確信している」 (McDonalds氏) という。

 SCEIの主張の中に,CVGSのエミュレーションが不完全なものだという部分があるが,互換性について,同社のCEOであるRoy K. McDonalds氏は次のように語った。「CVGSは,Macプラットフォームにおけるゲーム環境を拡大するものだ。完全な代替ではないけれども,ユーザーは満足するだろう。当社ではCVGSに対応した推奨ゲームのリストをホームページに掲載している。これはV1.0に対応したものだが,今後,150タイトル以上に対応した1.1のリストを掲載する予定だ」

 同社CEOによれば,今後とも互換性の向上と違法コピー防止技術の強化は行っていくが,それ以外の強化ポイントとしてMcDonalds氏は,アナログコントローラ,フォースフィードバック,インターネットプレイ,マルチプレイヤーゲームのサポートなどをあげている。マルチプレイヤーに関しては,現在は2人までしか対応していないので,4人まで拡大したいという。現在ではATIチップセットをビデオイメージングのスケーリングに使っているだけだが,また,3Dのハードウェアアクセラレーションは現在利用されていないが (ビデオスケーリングにATIチップセットを使っているのみ) ,ATI Rage 128対応マシンが市場により多く出た後で対応するかどうか,判断するという。

 なお,Windows版に関しては,すでに開発に取り組んでいるが,ハードウェアコンフィギュレーションが複雑なため,互換性を持たせるのが困難だという。リリース時期については未定。

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