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前例ない“Pepperの接客” はま寿司のキーマンは「新規プロジェクト」で社長をどう説得したかこれからのAIの話をしよう(接客ロボット編)(3/4 ページ)

» 2018年12月11日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

 「社長から『本当にできるのか?』と言われましたが、実際にデモ機がどう動くかを社内で見せると『はぁ、そういうことか。何だか面白そうだね』と言ってもらえました。社内では『面白そう』という反応が多く、そこからはトントンと進んでいきましたね」

 前例のない「ロボットによる接客」というプロジェクトとあり、紙ベースでの議論では具体的なイメージを共有できません。そこで、さっさとプロトタイプを作ってしまったという池ノ上さん。目の前にあるを基に議論することで、「もっと、こうしたら良いんじゃない?」という前向きな議論も始まったようです。前例がなくイメージを共有しにくい新規プロジェクトを進めるには、まず手を動かしてプロトタイプを作ってしまうのも重要なのかもしれません。

テスト導入したPepperは「1時間半で止まった」

 完成した試作機で、いよいよテスト的に導入をスタート。まずは1店舗で始めましたが、最初は苦労の連続だったようです。まず、通い慣れた店に突然Pepper君が登場したことでお客さんが困惑します。

 来店すると「いらっしゃいませー、ご案内しまーす」と、おもてなしをしてくれるPepper。しかし、お客さんは従業員に助けを求めるような視線を向け、「あの、2名なんですが……」と話しかける――そんな状況が続いたそうです。

 お客さんにPepperを使って発券してもらうよう説明するのは従業員です。中には「私たちが案内した方が早いのでは」と考える熟練者スタッフの方もいたようで、従業員にもお客さんにもPepperに慣れてもらうための準備期間が必要でした。

 そして、一番気掛かりだったのは「Pepperが突然止まってしまったらどうしよう」という不安。案の定、絶え間なく来店するお客さんを前に、Pepperは1時間半ほどで止まってしまいます。

 池ノ上さんも「運用やメンテナンスは大変でした」と苦労を振り返ります。

 「Pepperは止まっている印象が強く、社内でもそれを懸念する声は多かったです。店舗で実験する前に、1日当たり2000〜3000人来店しても大丈夫か、満席になっても動くかなど、さまざまな観点で検証しましたが、結局は1時間半で止まってしまった。いったん引き揚げて、そこから改良が始めました」

はま寿司 アジャイル的に都度改良していき、エラーを解消していった(YouTubeより)

 1時間半で止まったのには、理由がありました。外食業としておもてなしを重視し、ボディーランゲージを重視した設計にしたため、負荷が掛かったのです。

 池ノ上さんは「接客ロボットとして、お客さんのあいさつに対し、手を上げて反応するような動きが欲しかったんです。しかし、関節部分に負荷が掛かって止まってしまったため、それを改善しました」と説明します。

 休まず長時間働けるのがロボットのメリットだと思っていましたが、人間と同じくロボットにも休む時間は重要なようです。

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